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21世紀セミナーレポ vol.22 講演抄録神谷誠先生講演2 神谷流「小児歯科経営学」

神谷流「大脳生理学」

 最近凝っているお話といいましょうか、お母さんたちに一番うけている話を紹介します。
「お母さん、歯医者さんの一番大切な仕事ってなんだか知ってましたか?実は虫歯や歯周病の治療は二の次で、大脳生理学をやっているのですよ」。
 “大脳”と聞いた瞬間、お母さんは「この先生偉いんじゃないか」と思ってしまうところがミソです。あえてそう思わせた方が何かと都合がいいので、私は診療中必ずひとつひとつのことが終わるときに、「神谷先生ってやっぱり天才だよね、天才だと思うでしょ?」とつぶやくようにしています。とにかく『大脳生理学』という言葉は、最初の一言で「へえ」といわせるのにいい言葉です。それは、満更ウソじゃないのです。これはある先生が自信を持って言われた言葉で、『私たちが重視しなければいけないのは呼吸である。歯医者さんが管理するのは呼吸なのだ。吐いたり吸ったりするという呼吸を育成するのがこれからの歯医者さんの主なお仕事なんだよ』という話をそのままパクリました。実は大脳生理学というのは有名な神奈川歯科大学の佐藤教授が何年も前から、『大脳生理学つまり脳みその動きと歯の噛み合わせは密接に関係をしているのだ。よく噛むと頭がよくなるというレベルからもっと高いレベルで非常に複雑なからみあいをしているのだ』と言われています。佐藤教授の話でも『呼吸の管理』というのが重要なのだと言います。
 ところでお母さんたちにお話しをするときに、先生方は吸う息と吐く息とどちらが大事だと言っていますか。僕は最近まで吐く方より吸う方が大事だと思っていました。ようするに吸った時の動きが腹式呼吸というイメージがあり、吸うことから始まると思っていたのです。しかし、ある『中国4千年の歴史』のすばらしい中国の先生から、「吐かないと吸えないから、吐くほうが大事だ」と聞いたのです。
 その『大脳生理学』で私はこんなケースに遭遇したことがございます。この患者さんは私のところへ、小児歯科なのに勘違いしておいでいただいた患者さんです。どうも歯がしみて眠れない、という主訴でした。眠れないんだったら薬局にいって睡眠薬を・・・と言ってしまったらおしまいですから、「なるほど」と、とりあえず納得してみせます。さも解ったかのように納得します。「そうですか。もしかすると私に何かお手伝いできることがあるかもしれないので診てみましょう」。しかし、診てさらにどきっとする。虫歯は無いし、良い歯並びだし、骨格は非常に筋骨隆々としていい男だし、体に悪いところはどこもない。なのに、とにかく下の1番2番のあたりがしみてしょうがないと言います。確かに少し咬耗があります。これで今までの何も知らない私だったら、そこへセメントか何か塗るとか、とりあえずレーザーでもちょっとあてておいて知覚過敏の処置をする、これがファーストチョイスだったでしょうし、それ以外はできなかったかもしれません。
 でもふと待てよと、これやはり磨り減っているくらいだから何か負担になっているかなということで、ちょっとあごを横へ動かしてみてくださいと誘導してみたのですが、全然磨り減るような動きはしないのです。「動かして、では左右できりきりやってみて、普通噛むでしょ、その調子!」といくらやっても同じです。全然あたらないのです。しかし、まさしくそこがしみるとおっしゃる!?。
 ご存知の先生方もうお分かりですかね。実はこんなふうにするのです。食べるときはこんなふうにして食べないですよね。犬歯の尖頭こえたところに顎をもっていって噛むなんてよっぽどの変人かマニアか。まず考えられない。でもこの方は毎晩毎晩これを寝ている間にやるのです。
 佐藤教授の受け売りですが、「寝ている間はノンレム睡眠とレム睡眠がある。脳みそが休んでいるときには、他の臓器が一定のリズムをとって脳みそに信号を送り続けており、そのリズムによって他の臓器が最低限働くようになっている。つまり心臓が血液を送り出している。全部の機能が寝てしまったら死んでしまいますから。他の臓器が休んでいるときには脳みそが働いている。だから血液循環がある。では脳みそが寝ている時に一定のリズムを送り続けているのは何か、それが目の動きだということをいわれていたのですが、実は歯ぎしりというか、クレンチングというか、こういう動きです。タッピングかもしれませんし、そうでないかもしれない。歯が重なり合うということが脳みそを休ませている。『脳みそよ、安らかにお休み下さい』という役割を担っているのだ」ということを聞きました。聞いただけですから私のところに資料もなにもありません。文句ある方は佐藤教授のところにいってください。でも言われてみるとたしかに寝ているときにこんなふうにして脳のリミッタが外れていますから、やっていても不思議じゃないです。確かにそういうことはあるぞということで、さあ、これでどうしたか。なかなかうまくいかないのです。ひとつだけヒントをいただいたのが、ここまできたときに3番のガイドはもう関係ないのですね。普通に食事をしているときには3番、犬歯のガイダンス、要するに犬歯誘導というものがうまく機能していればそれほど咬合トラウマをおこさないはずなのですが、3番は外れていますから、完全に前歯でガイドさせないといけない。そうすると1歯対1歯前歯咬合になるとやばいだろう。それが2対1になると1の方は確実にやられるだろう。だからつねに2対2で極限をこえたバイトを作らなければ人の脳みそは休めない可能性がある。これは歯医者さんの仕事だ。耳鼻科行こうがどこへ行こうが大脳生理学の脳外科へ行こうがこんなことは解らないと。虫歯は無くなっても歯周病が無くなっても人間寝ないと死んでしまいますから。だから虫歯や歯周病の治療以上に、人の安らかな眠りを実現するのが歯医者さんです。歯医者さんには大事な仕事が残っているような気がします。そんなことを教えてくれた大事なケースでした。
 それから気をつけて診てみると、犬歯の先頭こえてとんでもないところで噛んでいる人が結構いました。ましてやこの時に、顎関節に近い6番7番が変なガイドをしていると確実に眠りは浅くなるようです。やはり前歯でガイドした方がいいのでしょう。どうも6番7番とくに上顎7番のあたりが「かっつんかっつん」当たっていると夜中に目が覚めやすい。そのようなことがあるのではないかと思います。あえて言うのなら咬合というのは梃子の原理で動いているのです。単独でかみ合っているわけではありません。どこかに支点と作用点があってその協調の中で歯は動いている。かみ合うという起点がありますから、一箇所バランスが悪い所があると、色々な所に悪影響を及ぼすのではないか推察されます。

レーザー導入のヒント

 レーザーをやりはじめて10年近くになります。
 実は何年か前に、レーザーに関してすごいことを発見してしまいました。レーザーの技術ではなく導入の話しです。新しい医療技術をもし先生方が導入しようと考えた時に、コストと収入のバランスを考えて悩むことが多いと思います。しかし、その前に、実際自分の医院にその器械技術がそぐわないものなのか、もしくは求められているものなのかを調べる簡単な方法あります。アンケートを使うのです。これはどのようなアンケートなのかというと、内容はどうでもいいのです。大事なのは3部構成だということです。1番上が医院の先生方のモットーです。うちはこんなことをやっていますよという挨拶文を書いてください。2番目は例えばレーザーの効果、効能を分り易く書いてください。私は書けなかったので絵を入れていますが、3番目にそれには「お金がかかる」ということを書いてください。最後にそのレーザー治療をうけてみたいかどうか「はい」、「いいえ」、「必要なら説明をうけてやってほしい」、ここにチェックをつけてもらうようにします。
 このアンケートを患者さん100人に実施してください。1日10人にお願いしても10日。5人だったら20日。1日20人やれば5日で終わります。ただし、この時にいくつかポイントがあるのです。ひとつは、『チェックをつけさせるところをこれ以上多くしない』ことです。この機会にどうせだからと「うちの衛生士の働きについていろいろお聞かせ下さい」などとアンケート項目をふやしてはダメなのです。患者さんが面倒くさくなります。もうひとつは、アンケートをお願いする時は、アンケート用紙を受付で差し出します。診療室に入ってくると院長の目が光っている、衛生士の目が光っていますから待合室で記入してもらいます。受付で実はと言ってアンケート用紙を差し出します。
 そこでただ、アンケート用紙だけ差し出してはいけないのです。このときに実は「お忙しいところ誠に申し訳ない、実は当院で今ちょっとこういう画期的な治療を導入するにあたってアンケートにご協力いただきたい・・・」等々説明しながら、アンケートとそのお礼の品を差し出します。これは微妙なタイミングで、「どうか」と声をかけた所でだいたいこちらを見ますから、お礼の品を差し出してからアンケートと、ちょっとずらして先にお礼の品を見せるところがミソでございます。お礼の品は、当院では歯ブラシや歯みがき粉等の虫歯予防グッズを相手を見て変えています。ちなみに、渡し方は受付で練習してもらいます。人間物をもらうと、ありがたいものです。ましてやアンケートは質問が一つで答えは三択、チェックするだけです。でも物をもらってしまいましたので、一応読まなければいけない。誰も見ていないですから一応正直に書こうかなと本音で書いてくれます。
 そこで100人にアンケートを実施した結果として「いいえ」という所にチャックが10人以上入ったら、これはもう時期尚早です。先生の診療室にはその技術導入はそぐいません。やめたほうがいいです。90人以上「イエス(「はい」「必要なら説明を受けてからやってほしい」)」が出たら、導入したら患者さんは支持してくれます。先生の医院をそれだけではかることができます。今、レーザーはかなりスタンダードなものになっているし、イメージは悪くない時代だと思います。ある意味では最先端医療に取り組んでいるかどうかというひとつの目安にもなっているくらいですから、使いこなせているかどうかではなくひとつのステータスなのです。恐い時代になりました。ほいほい買っちゃったけど、ほこりをかぶっているレーザーありませんか?
 さて、その先をもうひとつ、オチがございます。実は物を差し上げるということもひとつなのですが、最近はこれです。『歯医者さんが作ったチョコレート』。せっかくですから後で何かつながった方がいいじゃないですか。もっとすごいのは、『レーザー1回体験無料券』。せこいように思いますが、値段にしてみれば約2,000円です。チョコレートは800円ですから、へたすれば2個半買えます。もしよかったら1回無料体験できますので、と渡しておけば、次につながるのです。当院はレーザー使い始めて長いので、最近ではレーザーの説明は一切しません。もっと言うと、ありがたいことに自由診療の話、メタルボンドや金属床の話もあまりしません。たとえば歯並びの誘導などは別ですが、こと、子育て歯援隊・健口管理に関しては、患者さんとかお母さん方に私が一応このようなお話をしないといけないので「実は当院では」と言いますと「知っているからいい。つまらないこと言わなくていいから早くやってくれ」と言われるのであまりお金の話はしなくなっています。やはりこういうことを1年2年続けていくとそういうイメージが出来上がってくれますから、最近このレーザー無料体験というのもなつかしいなと思ってひっぱりだしてきましたが、やってみる価値はありますし、そうすることによって確実にあいつ(レーザー)は稼いでくれます。結構いい息子なのです。