「健・口・美」と歯科の未来
●「健・口・美」の達成めざす
先ごろ、歯科界4年に1度の大イベント「第21回日本歯科医学総会」と「デンタルショー2008」が、「めざせ!健・口・美−未来に向けた歯科医療−」をテーマに掲げ、パシフィコ横浜で開かれました。金融恐慌と世界同時不況の危機、少子高齢化や医療・介護・年金の諸問題等、日本の医療が直面している矛盾と困難に向かって、日本の歯科界がどのような展望を切り拓いてゆくのか、歯科医療の進路をめぐる議論に注目しました。
医学会総会の式辞で総会会頭の大塚吉兵衛氏は「少子高齢化と多面的な高度情報化という環境変化のなかで、高齢者、特に有病者に対するQOL向上に向けての摂食機能回復、終末期歯科医療に対する認識が深まっている」と述べ「国民の歯と口腔の健康に対する貢献のみならず、全身の健康増進に貢献すべく、歯科界が共通の夢と価値観をもって未来に向けた歯科医療の展開を」と訴えました。4年前日歯連贈収賄事件で社会的批判を受けた歯科界が、信頼回復の方向を定め、医療人として口腔ケアをつうじて国民の美と健康に寄与する歯科の決意を表明したものと受け止めました。
●終末期医療&摂食嚥下
総会での講演やセッション、デンタルショーの展示をつうじてひときわ活況を呈していたのがインプラント会場。「経営改善の切り札」としてのインプラント指向が極めて強いことを物語っています。日本の歯科医療が「補綴による咀嚼機能と審美性の回復・向上」をめざすことに主眼を置く現状では自然の流れかもしれません。しかし同時に、今回は「終末期における歯科の役割」「歯科の立場からの摂食・嚥下機能障害へのアプローチ」「口から食べる」等のテーマにみられるように、高齢者医療に積極的に参加しようという新しい動きがあることも特筆されます。「これまで歯医者は医者ではないといわれてきた」(「終末期在宅歯科医療」の報告をした、長崎県開業 角町正勝氏)、「今年『口腔機能の評価および管理』が後期高齢者医療に明記されたことは画期的なことで、歯科には追い風が吹いている」(「病態時期別摂食・嚥下機能へのアプローチ」を報告した、日大歯学部教授 植田耕一郎氏)という発言から、新しい歯科医療への萌芽も感じられました。
●ターゲットは「脳」の活性化
コムネットは、デンタルショーにおいて「高齢者医療を変えた歯科の新領域」をテーマに、Mパタカラ開発者の秋広良昭氏を講師に迎えて出展者セミナーを開催しました。秋広氏は、10月の国保地域医療学会を驚きと感動でつつんだ、岩手県遠野市における深澤範子氏らの実践、M(メディカル)パタカラによる口腔筋・表情筋エクササイズで脳血流が増加し、これまで不可能とされてきた「要介護度の改善」の実例を紹介。参加した歯科医師、スタッフも驚きを隠せない様子でした。今年の診療報酬改定で大幅に強化された在宅・訪問診療における「口腔機能向上支援」を実効あるものにするためにも、最大のターゲットである「脳」の活性化が不可欠であり早道である。それを納得した参加者は、セミナー後すぐさま「最初の一歩」を踏み出すための準備を開始しています。
パタカラは、大塚会頭が語った口腔ケアによる「高齢者・有病者のQOLの向上」そして「口腔から全身の健康へ」、その課題に回答を与えるひとつの確実な方策です。歯科の未来は明るい。確かに歯科にはいま「追い風」が吹いています。この風をとらえ、高齢者・患者さんをはじめとするすべての市民の健康・QOL向上と医院経営の飛躍を達成する「健・口・美を達成する歯科の時代」を招来しましょう!