ギャップを埋めるために
●大幅な「広告規制」緩和決定
患者・国民に向けた情報提供、コミュニケーションをめぐって、医療界には活発な動きがあります。4月1日施行の改正医療法によって「医療機関の広告」は、規制緩和の流れをさらに進め、大幅に枠が広げられました。厚生労働省の「医療広告ガイドライン」には、自由に掲示、配布できる「広告とみなされないもの」として、
- 1.学術論文・発表
- 2.新聞雑誌の記事
- 3.体験談・手記
- 4.院内掲示・院内パンフレット
- 5.患者さんからの申し出に応じて送付するパンフレットやメール
- 6.職員募集広告
- 7.インターネットホームページ
が上げられています。規制対象とされる可能性がささやかれていたホームページが「広告ではない」と判断されていることが注目されます。
また、広告可能な事項として新たに
- 1.写真・イラスト・映像・音声
- 2.わかりやすい表現
- 3.略号・記号
が加えられ、さらに非常勤歯科医師をはじめ、歯科技工士や歯科衛生士などの国家資格をもつ医療従事者の氏名のほか、自由診療である歯列矯正等も広告できることになりました。
●国民・患者さんは「情報不足!」
会員情報誌・Togetherの連載「コンプライアンス経営のヒント」で紹介されている、昨年度の医療相談が「2700件増の4万4千件」「その6割が『苦情』」という数字は、医療への不信感と同時に、「説明」「情報」「コミュニケーション」が決定的に不足している実情を表しています。
日本医師会が昨年春に行った「日本の医療に関する意識調査」によると、かかりつけ医(診療所)を選ぶ理由は、相変わらず「通院に便利」(71.7%)がダントツのトップですが、続いて「よく説明してくれる」(34.7%)、「医師の人柄(親切、共感してくれるなど)」(28.7%)、「あなたの病歴や健康状態などをよく知っている」(28.1%)と続き、情報やコミュニケーションが、医院に信頼を寄せる大きな要因であることを物語っています。
それを裏付けるように「かかりつけ医が見つからない理由」(複数回答)として患者があげた理由が、「どこで探せばよいかわからない」(52.2%)、「優れた医師とわかる判断材料がない」(48.7%)、「医師や医療機関の情報が十分にない」(45.2%)というものです。患者・国民は、これだけ健康ブームで過剰ともいえる情報の渦の中で、決定的に「知らない」「わからない」状態にあるという現実を改めて認識させられます。
●「知らせる」努力してますか?
前回の本コーナーで述べた「ホンモノ」にしても、患者さんに伝わらなければ「感動」は与えられません。患者さんに伝える、知っていただく努力をどれだけ行っているか、この年度替わりに、あらためて自院のコミュニケーションレベルのチェックをお勧めします。
たとえば、患者さんと積極的に話しているか。予約時間を過ぎてお待たせしている患者さんに声かけをしているか。医院の診療理念や方針をまとめた案内リーフレットを作っているか。せっかく資料を作ってもそれを「ご自由にお持ちください」と積んでおくだけではないか。何人持っていったのか記録しているか。誰にいつ手渡したのか。治療内容と治療費をわかりやすくまとめて掲示、閲覧できるようにしているか。ホームページの訪問件数をチェックしているか。患者さんにとって見やすく役に立つコンテンツかどうか。定期的に更新しているか。無断キャンセルは増えていないか。キャンセルにはどう対応しているか。…等々、院内ミーティングを開き、どのように患者さんの疑問やクレームに対応し、心の声をつかむ努力をしていくのかを話し合い意思統一を図ることをお勧めします。
患者と医療者の間には大きなギャップが存在しています。規制緩和を追い風として、あらゆる場面を通じて、患者さんの悩み苦しみに耳を傾け、患者さんが知りたいと思っていることに正確に答え、相互理解を深める努力を、医院の側から、スタートさせていきましょう。