歯科ルネサンスのために
●日歯の「再生」は可能か?
日本歯科医師会の井堂会長の新体制が始動しました。果たして日歯、そして歯科界の再生(Reborn=Renaissance)は可能でしょうか?
前回の本欄
(Reborn to the Future!)で、私たちは歯科界に対し歯科医療の原点に返り本気で「生まれ変わる」ことを呼び掛けました。しかし、6月9日の中医協の参考人として述べたと報じられた井堂会長の言葉に驚きました。氏は「かかりつけ初診」の申請要件緩和問題について、「…(要件緩和を求めたことは)歯科医療の質を確保していく観点からは決して間違っていなかった」と発言したのです。
●「反省欠如」の意味するもの
ご承知のとおり「か初診」算定の要件を緩和した結果、診査も治療計画の提示も換骨奪胎の状態になり、患者さんに対して具体的な提示をしなくても診療報酬だけは算定できるという、「患者不在」を地で行く制度に変質したことは紛れもない事実です。それに対する根本的な反省がない限り、今回の事態がもたらした「医療不信」の現実を見誤ることになります。即ち「診療報酬を金で買った」ことへの根本的な反省が必要だということです。
「再生」を語るのであれば、金で変質させた「か初診」を振り出しに戻すことから始めなければなりません。「間違ってはいなかったが、やり方が違法だった」という程度の認識では、前体制の姿勢と何も変わりません。
●根本は「患者さんにどう向き合うか」
6月20日、コムネットは表情コミュニケーション研究所主宰・歯科コーディネーターでもある山田桂子先生を迎えて「21世紀セミナー」を開催しました。山田先生は「いまサービス業にルネサンスの時代が到来している。歯科医療の世界でも同じ。サービスの基本に返り、医療者と患者さんの真ん中に《健康》という目的を置き、それに向かってともに努力していく関係、『パートナー』としての関係を築いていきましょう。」と訴えました。
この、患者さんにどう向き合い、「どのような関係を構築するのか」が、歯科界の再生を左右する根本問題にほかなりません。「か初診」で図らずも露呈したのは、医療者側の身勝手さでした。「自分の症状を知りたい」「治療計画をもとに健康を取り戻したい」という患者さんの根本的な願いを反故にし、診療報酬に換えていたのです。患者さんを「パートナー」と考えるなら、そんな発想が生まれるはずがありません。
●歯科医療の原点に返って
歯科界ではいま、インターネットの普及ともあいまって、患者の立場からの病院・医院評価や紹介ビジネスが活発化しています。会員向け情報誌・典ogether狽フ2004年7月号で紹介している「
アイボリーネット・サービス」も、患者さんに寄り添った姿勢と厳格な評価基準で、歯科医院の「機能評価」と紹介サービスを行っています。「市場」は確実に「患者が選ぶ」時代に突入しています。
今こそ歯科医療の原点に返り、患者さんとの良好なパートナーシップを育む姿勢を確かなものにして、日々改革、日々再生の「ルネサンス精神」で、あせらず、着実にアプローチしていきましょう。