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<中>パタカラ「つぐみちゃん」の開発

 口輪筋というのは、2、3歳くらいから成人までの間に一旦パタカラを使って口唇閉鎖力が上がった方は平均値からなかなか落ちません。そのまま成長プログラムに乗るせいだと思いますが、落ちません。しかし、もう私のようにもうすぐ59歳という年になると、口唇ストレッチをちょっと怠けると口唇閉鎖力は日に日に下がってしまいます。下がるといろんな症状が出てきてこれは自分で、「あ、パタカラをさぼっているからだ」ということをいやでも自覚させられます。そういうことで、赤ちゃんの場合に哺啜動作をしっかりやっておかないと口唇筋の発育不全の状況はそのままずっと続いていく。成長プログラムに乗った人とそれ以後でも十分な成長プログラムに乗らずに成長が終わってしまった人と成人してからも日常の健康状況に差が出やすいということをお話したいと思います。

口唇は筋組織の塊

 口唇というのは筋組織の塊であると言い切って良いと思いますが、口唇の筋組織が十分に能力発揮されないケースがあります。赤ちゃんの場合には発育不全が一番大きいです。使わないための萎縮、あとは年令とともにおこる老化が、実は大きな疾病を招くことになると思います。
 赤ちゃんで一番困るのは、パタカラ、リップdeカムで「唇を閉じてください」といわれてもできないこと。日本語が通じないので土台無理なのです。従って赤ちゃんの場合には吸啜反応を利用して測ってあげると良いと思います。もうひとつは、老人が痴呆症を起こしてしまって、計測のために口を閉じて頂くお願いが理解できない人たちに対しても同じようなものが必要ではないかと考えました。やはり、このオトガイ筋の筋圧の計測もこれからは必要だと感じています。
 これは「つぐみちゃん」といいます(写真1)。赤ちゃんの哺乳瓶にアタッチメントをつけました、そのために口をつぐまないとミルクが飲めないという、これは赤ちゃん受難時代です。そういうものを作りました。従来から市販されている哺乳瓶乳首は何もしなくても下を向けると乳首からミルクが流れ出てきます。生まれた時から知恵がついている子なら、黙って溜まったところで「ごくん」と飲み込めば実に簡単に、何ら苦労することもなく生活ができ、1日が過ぎていきます。そこで、哺乳瓶乳首に「つぐみちゃん」をセットすると唇でしごかないとミルクは吸っても出ません。しごきをやめると止まってしまう、苦労させられる乳首を作ったわけです。

「うつ伏せ寝」の原因

 保健所で歯科検診・相談の時にこの写真(写真2)のお母さんに「うちの一歳半の子供は『いびき』をかいて口が臭くて、どこへ行ったらいいでしょうか」という質問をうけました。今までなら、どこにいったらいいかわからなかった。でも、私は迷わず「秋広歯科医院に来て下さい」とその方に申しあげました。実はこの子に「つぐみちゃん」をやってもらったわけです。そうすると、たった10日で口を閉じて寝られるという写真を持って来られたのです。その時モニターとして「使用前」の写真を予めお願いしておいたので何枚か持って来て下さったのですが、みなこの様に横向きに寝て、口を開けて寝ている写真なのです。実は、うちの女性のスタッフから、「この写真では『唇が枕でおされたために開いているのかもしれない』と言う人がいるかもしれません、出来れば上を向いて、口を開けて寝ているポーズの写真をもう一枚頂いてもらえませんか」と言われました。頼んでみると、皆さん「以前から、この子が寝ているときは口を開いて、横を向くか、うつ伏せ寝で下を向いて寝ている姿勢しかしない」のだそうです。子供は何も言わずに、苦しいものですから自然と自己防衛のため横を向いたり、下を向けて眠るしかない、それが現状だったんですね。横向きやうつ伏せ寝で眠るのは赤ちゃんの好みではなかったのです。私はそれを聞いてびっくりしまして、10人ぐらいのモニターに「つぐみちゃん」をやってもらったところ、使用前写真を眺めてみると全員横向きかうつぶせ寝なのです。それが、口を閉じて眠れるようになった写真を見ると顔が上を向いているのです。この寝姿はヒントになりました。そうすると今までの「唇は閉じるということは習慣である」という通説、「習慣説」というのは全然違う「インチキの説だ」ということがこれを見てわかりました。そうしますと、やはりこの赤ちゃんの場合にはやっぱり母乳が出なくて哺乳瓶で発育、飼育させられていたわけで、乳児期の吸啜時に、口唇の筋肉トレーニングがされない状態が続くと口をあけて寝る、更にのどが腫れてきて息苦しくなる、舌根も気道に沈下してくる、すると横向きに眠るということが分ったわけです。
 これは5歳の女の子なのですが(写真3)、やっぱりこの子が口をつぐんで寝ない。この子の写真を撮影した時はまだちょっと口は開いているのですが、こちら(使用後)の写真に移るともう今は完全に口を閉じて寝ていられると。で、この子の場合はその時にお母さんがお話されなかったので分らなかったのですが、後で聞いたら、この子はすでに5才なのにまだ指しゃぶりをしていたのです。かなりこの指しゃぶりが強かったものですから、お母さんは実は、将来、大きくなると開咬になるかも知れないということを存じていたものですから、なんとかやめさせたいという希望があったのです。

指しゃぶりとMFTの関係

 話が元に戻りますが、実は10人のモニターの赤ちゃんの内、4人が「指しゃぶり」も同時にしていたのです。しかし、口を閉じて眠れるようになるとすぐ、指しゃぶりが自然にやめられたのがその4人中の2人でした。10日くらいで「指しゃぶり」もスッとやめたのです。あと残りの2人がそれから更に半月くらいから1ヵ月かかりまして、それぞれ一人ずつ「指しゃぶり」をしなくなりました。「指しゃぶり」というのは、(釈迦に説法かもしれませんが)赤ちゃんが生まれる前に胎児の時に指しゃぶりをしているのは、口輪筋、口の周りの筋肉が発育させるためにやっているのだということが皆さん、諸先生方の間ではコンセンサスがとれていることですが、赤ちゃんが一旦生まれて、体内から出たとたんに指しゃぶりをすると何を言われるかと申しますと、「お母さんと赤ちゃんとの間のスキンシップが足りない」と言われるわけですね。全然違う問題が提起されてしまう。こういう説明が出ると、その説は間違いだという証明はまず絶対出来ません。今まで口輪筋をトレーニングするという考えや器具がなかったためにこういう説がまかり通っていて、全く変な理論が世間に出て来ます。中には最近テレビを見ていましたら、「小学校までおしゃぶりをさせろ」とか、中には「いびきをかく人はおしゃぶりをして生活しなさい」というとんでもないことまで言われています。自分が世間に注目してもらうためだけに、何でも先に言ったが勝ちと言うそういう世界だったわけです。ですから、たかだか「指しゃぶり」ということも、実はMFTと非常に関係があるのだということをもう一度ここで改めて認識していただきたいと思うのです。

乳幼児突然死症候群の原因

 特に、口の周りの筋肉との問題としまして、人生においては、呼吸困難の時期の問題が実は2つあると思います。1つは最近しょっちゅうテレビに取り上げられています、睡眠時の閉塞型無呼吸症候群の問題、それから、お母様方にとっては非常に不幸なことなのですが、乳幼児突然死症候群という問題があります。乳幼児突然死症候群が起こるのが大体2ヵ月〜6ヵ月の間と言われているのですが、どういう子供に多いかと言いますと、母乳を飲まない赤ちゃんは飲んでいる赤ちゃんの4倍以上の発症率であると。それから、うつぶせ寝をしているときにおこるという。あとのことはほとんどわからないのですが、剖検では、死後に解剖してみますと、扁桃が腫れているとか炎症が気道にあるということが報告されている以外には何にも分からない、不思議な病気といわれているのが実は乳幼児突然死症候群です。

 ここまでお話しすれば瞬時におわかりいただけると思いますが、実は赤ちゃんの哺乳状況が口輪筋の生まれた直後から1ヵ月2ヵ月と経ってきますと胎児の時に貯めたいわゆる貯金が底をついて、口輪筋の発達がとまっているわけですから、残存能力が底をついて口を開けて眠ると喉が炎症で腫れ、舌根も気道に沈下しやすくなる、総合的に、なかなか呼吸が出来にくくなってきた時に、赤ちゃんにとってはうつ伏せ寝をすると呼吸が楽ですから良く眠れる、それを見て親は安心する、こういう時期は、口唇閉鎖力は未熟ですから、まだ充分に発育してない、そういう時に実は睡眠時に、うつぶせ寝をさせますと、喉頭部が非常にのびるのです。のびて、しかも、ねじれてしまうということから、どうもデッドスペースを作ってしまって窒息しやすくなるということが、これもこの事実もすでに報告されていますから、分っていることであります。それから舌の大きさが、赤ちゃんは生まれたばかりですから相対的に口に対して大きいということも当然のことです。それから当然喃語を話すわけですから舌骨や喉頭の位置も比較的高い。ところが、この口唇閉鎖力というのはまだ社会に認知されていないといいますか、たかだか3年くらいのことですし、赤ちゃんについてのことは全然研究されておりませんので当然、世間には余り知られておりません。
 そういうことから6ヵ月以降になると乳幼児突然死症候群がぐっと減ってくるのです、もうほとんどいなくなるのですが、こういうことでちょうどその喉頭部のデッドスペースとの関係も無関係になってきて安全に呼吸できるようになります。