「安心と信頼の歯科医療」かかげ18年
私たちコムネットは、「コミュニケーション・相互信頼・安心と信頼の医療」をテーマにかかげて、1987年10月に創立しました。当初はパソコンによる患者管理システムの開発・販売をすすめ、ITコミュニケーションシステム、デンタルサポートシステムのパイオニアとしてがんばってきました。
現在かかげている基本理念は「患者さんに笑顔と健康を!歯科医院に夢と誇りを!歯科界に元気を!」ということで皆さんと共に歯科界に元気をつけていきたいという思いでいっぱいです。
スローガンは、「もっとコミュニケーション!」。院内でも患者さんとも、旺盛にコミュニケーションををはかっていこうじゃないか、ということです。歯科医療は本来「最高の癒し」であり、国民の健康、QOLの要であると、私たちは考えています。それは内村鑑三の名言「Dentistry is a Work of Love.」という言葉にも表されているとおりです。
患者さんを真ん中にして予防、継続管理、健康増進、そして笑顔を創造する歯科医療の推進、歯科医院作りを応援してこれまで18年間がんばってまいりました。
「リーダー不在」の歯科界
本年5月31日、日本歯科医師会、臼田前会長に懲役3年の判決が下されました。患者や国民の方をむかないで、金で政治を動かそうとした古い体質の終わりをつげる事件でした。またそれを終わりにし、決別しなければ日本の歯科界は再生できないと思っています。歯科界はまだ国民に明確な謝罪を行っていません。リーダー不在の現状です。みなさんお一人お一人がこれからの歯科医療を築く主体者だと思います。皆さんが「明日の歯科医療を背負って立つ」という気持ちで、私の話の中から、明日からの歯科医院経営に具体的にいかしていただけるものがあれば幸いに存じます。
さて、今日のタイトルは「行きたくなる歯科医院」の条件はなにか。私たちコムネットが2001年にインターネットを使って行いました、1万6千人におよぶ患者さんの生の声から、これからの時代に求められている歯科医療や歯科医院のあり方について考えてまいりたいと思います。(図1)
歯科界の歴史と現状
初めに日本の歯科界が今直面しているおもに経営の問題についてお話をさせていただきます。「護送船団の崩壊」、先ほど並木先生からもお話しがありましたが、日本の医療は護送船団が崩壊した現状にあります。1970年から厚生省は15年後、1985年を目標に人口10万人に対して50人、つまり人口2000人に1人という歯科医師養成を目指して歯科大学、学部を増設してきました。その結果大学の数は1970年の17大学から79年には29大学になり、その定員も1460人から3360人に増えました。今年の歯科医師の合格者は2493人です。そして、去年の11月の時点で歯科医院は6万6674、人口約1900人に1医院という割合になります。(図2)
当然1医院あたり、そしてドクター1人あたりの患者数も減り続けています。患者の絶対数でも2010年をピークに患者数が減少すると予想されています。
それは少子高齢化も進み、人口が来年をピークに減少するということに関連がありますけれども、2020年には高齢化率も25%を超える、人口は2035年に1億1千万、2100年になると人口は現在の半分になるのではないかといわれています。(図3・図4)
12年間で診療件数▲25%
では、歯科医院の経営はどうでしょうか。「収支の差額」、医業収入から支出をひいた差額が、個人開業歯科医院で現在122万5千円という数字です。12年間で診療件数が25%、点数では18%も減少しています。健保の支払額をみると、年間「3000万円以内」が9割以上、平均で1396万という数字です。一ヵ月になおすと116万、これに自費が2割で年間になおすと約1225万という数字になると思います。
また帝国データバンクによりますと、歯科医院の倒産も5年間で224件というふうにいわれています。原因は以前のようなバブル型の放漫経営型が減少して販売不振型、要するに売り上げが伸びないことが原因の倒産が増えているといわれています。
次に医療保険制度の問題です。国民医療費が31兆、国民ひとりあたり年間24万7千円です。歯科はその8.3%
の2兆5882億円です。しかし、こんなに毎年毎年医療費を使っているのに、病気が一向に減らない現実があります。
国民医療費は厚生労働省の推計によると2025年にはなんと69兆円になると推定されています。この前国会で聞いた話では、これをまかなうためには消費税を10年後には19%にしなければならないという話がでています。(図5)
「医療ビッグバン」進行中
こうした中で2000年に「医療ビッグバン」がスタートしました。内容は「規制緩和」、それから「外資の導入」、「民間活力の導入」と「情報公開」。なかでもポイントになっているのは外資の導入と電子化ということになります。この改革は、名目上は医療サービスの消費者である患者満足を中心にすえた医療改革ということになっていますけれども、実のところは「自己責任」の時代の到来です。「護送船団方式」は終わりをつげたので、あとは「自力でがんばってください」ということです。
1992年に野村総研のレポートが発表されました。「わが国における歯科医療報酬体系の基本的なあり方に対する研究」というタイトルで、「歯の保存、補綴中心の医療では将来10万人を越える歯科医師の経営を支えることはできにくい」「患者数は2005年でピークをむかえ、歯科医院の収支は2010年には現在の40%に落ち込む恐れがある」と予測しました。
2010年歯科医師にも失業者!?
1990年には1800万あった収支の差額が2000年には1000万になり、予測している2010年には700万まで落ちる。つまり40%まで落ち込むおそれがある。別のシンクタンク日本総合研究所も2005年を境に収支はマイナスに転ずる。厚生労働省も「2010年から歯科医師の失業者がでる」と予測しています。
前述したように、国は、あれほど1970年から歯科医院をたくさん作っておいて、それで今になって、現状の診療システムでは失業者がでる、護送船団方式はやめたから今度は自力でやってくださいと、いうことで2010年から失業者がでますよと、ずいぶんな話だと思いますけれども、変えるのであればそういうシステム自体、診療報酬体系を補綴型からダイナミックに予防型に変えるとか先手先手に手をうって、医療界を導かなければならない、新しいものを提示しなければならないはずだと私は思います。
いずれにせよ、従来の補綴型治療中心の医療では破綻は必至であるいうことはすでに誰の目にも明らかだと思います。国の政策に頼っていては打開の展望は切り開くことはできません。
患者が選ぶ「サービス業」の時代
ではこれからどうなるのか、いや「どうするか」が問題です。よく「勝ち組」「負け組」といわれますが、現在、こうした状況の中で課題となっているテーマのひとつが「患者が選ぶサービス業の時代」ではないか。すでに平成10年版の『厚生白書』では「医療はサービス業である」とうたっています。それから「予防管理・継続管理の時代」が到来しています。それから「歯科と全身とのかかわりが強調され」エビデンスの積み重ねが進められています。さらに治療ではなくて「美と健康」、「アメニティ」を創造する時代に入っていくことが予想されると思います。
つまり、今後のことを考えると、厳しい現実はありますけれども、こういう課題に真正面から取り組んでいくならば突破の目はいくつもあるし、発展の可能性も十分にあると私は考えています。