歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

「生きることは食べること」

高齢者介護・支援の根幹に口腔ケアを据えて

●転機の2000年―少子・高齢化日本

 日本人の少子高齢化が急速に進んでいます。1995年人口の14.8%、1860万人の高齢者(65歳以上)は、2025年には27.4%(3312万人)に増え、2050年になると、人口の3分の1、実に32.3%(3245万人)に達すると予測されています。寝たきりなどの「要介護者」も2000年の280万人から2025年の520万人に増加します。
 国民医療費は、厚生省推計で昨年(平成10年度)ついに30兆円を突破(うち老人医療費は11兆4千億円)。これらを背景に、来年西暦2000年は日本の医療、なかでも老人医療が大きな転換を迫られる年になるでしょう。

●混沌のまま?2000年4月介護保険スタート

 来年4月介護保険制度がスタートします。それを前に、現在様々に議論が交わされています。「要介護者の認定基準」「費用負担の格差」「営利企業の参入」等の問題点も明らかになり、今後の行方は混沌としています。自民党からは「来年4月スタートはムリ」という声まで上がり始めました。
 歯科においても、対応は極めてあいまいで、昨年度実施された介護保険モデル事業(東京)でも、「医学的管理が必要」な歯科の領域がわずか3.5%に過ぎなかったというデータが発表され、あらためて日本の医療における歯科医療の位置づけの低さを浮き彫りにしました。

●施設の現実―ハミガキは1週間に2〜5回

 一昨年、口腔保健協会が発行した『介護保険と口腔ケア』には、歯科医療関係者の反省をこめて、高齢者医療における歯科領域に対して、多角的な検討が加えられています。「改めて知ってほしい点」として、同書は、まず高齢者の厳しい口腔状態をあげています。施設における口腔刷掃は「毎日」ではなく、「1週間に2〜5回以上」しか提供されないサービスであり、入所者の口腔状態は深刻です。その現実を知らず、あるいは見過ごしてきた歯科医療関係者の責任も重い、と指摘しています。
 2点目として、特養等老人施設を利用する高齢者の「いちばんの楽しみ」が「食事」であることを認識してほしいと述べています。生活のなかの最大の楽しみである以上、その願いに真っ先にこたえるべきではないか、と。そして、この現実のなかに、歯科医療の果たすべき領域、それも高齢者の(即ち全ての国民の)QOL(クオリティーオブライフ=生活の質)の根幹を担う責任と、可能性があるのではないか、と訴えています。

●「食べることは生きること」の実践を全国で

介護保険実施に向けて、私たちはこの現実を直視することから始めなければなりません。まず高齢者のもとを訪ね、自ら刷掃し、入れ歯を調整し、介護人や施設職員に指導する、つまり「介護サービス」に自ら積極的に取り組んでゆくこと、それがいま強く求められています。診療所から目と足を外の「生活」に向け、高齢者、患者さんの願いに応える歯科領域からのアプローチを試みましょう。
 「食べることは生きること」の支援を通じて、介護、ケアプランのなかに口腔ケアを正当に位置づけるための努力を、直ちに開始することを提起したいと思います。医療全体における歯科・口腔の役割は、いまとりわけ強調されなければなりません。社会全体がそれをいかに早く深く認識できるか、それは日々、地域で地道に診療活動に取り組んでいる、一人ひとりのドクター、スタッフの奮闘、実践の積み重ねにかかっています。「超高齢化社会・21世紀は歯科の時代」それを掲げて前進してゆきましょう。
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