歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

「食べて生きる」連携支援

老人福祉施設研究会東北大会

「地域包括ケアシステムを活かすチームワーク 〜地域とともに歩む社会福祉法人としての使命〜」をテーマに掲げて、9月上旬仙台市で開かれた「老人福祉施設研究会」東北ブロック大会。県大会を通過して臨んだ発表者のなかに、Togetherで「生きることは食べること」を連載している、石巻市の旭壽会の特養ホーム「一心苑」の管理栄養士、佐藤真由美さんの姿がありました。佐藤さんは「重度嚥下障害者への経口摂取継続に向けた取り組み〜口から食べたい気持ちに寄り添って〜」と題して、嚥下に重度の障害をもった高齢の入所者と家族の「食べたい」願いに応えるため、多職種が連携して「経口摂取」継続のために行った取り組みを発表しました(本誌6月号で紹介した小野寺末治さんの症例)。

「経口摂取か胃瘻か」の瀬戸際で

5年前、当時71歳の末治さんは度重なるてんかん発作とアルコール依存症、認知症も発症してベッド生活となり特養ホーム一心苑に入所しました。要介護度5、障害高齢者の生活自立度C2、認知症高齢者の生活自立度Vaで、入所後3年目嚥下障害が強く現れるようになりました。

食事形態や介助など様々な努力をしましたが、障害が進み、食事摂取量も減少していきました。家族は、食べることが大好きな末治さんの経口摂取を望んでいましたが、胃瘻との併用もしかたがないと考えていました。

「経口摂取継続」へ多職種がんばる

そこで、胃瘻増設可能な病院を受診したところ、雄勝歯科診療所の河瀬聡一朗先生を紹介され、摂食嚥下評価をしてもらいました。内視鏡検査で河瀬先生は「口腔から咽頭への送り込みや鼻咽腔閉鎖不全など問題点は多く摂食嚥下機能の低下がみられるが、PTやSTなど多職種が連携を図って対応することで経口摂取は継続できる」と判断しました。

河瀬先生と佐藤さんたち旭壽会のチームは直ちに口腔ケアや介助の徹底、食形態調整、嚥下体操やブローイング、アイスマッサージなど摂食嚥下リハビリテーションを開始。末治さんも毎日努力を続けました。すると2ヵ月でむせや食事中断の回数も激減し、1回の食事時間が40分から15分に短縮したのです。驚くべき変化でした。義歯も新作してトレーニングを粘り強く進めました。義歯装着後は固形物も食べられるようになり、食事時の覚醒状態も良く、精神的にも落ち着いて表情も穏やかになりました。

およそ1年後、末治さんは一度も誤嚥性肺炎に罹患することもなく、しっかり噛んで「美味しい」と食べられるようになり、家族もとても喜んでくれました。

佐藤さん東北大会で堂々の1位獲得

佐藤さんは、この取り組みを熱い思いを込めて研究会で発表しました。結果は、県大会に続いて東北ブロック大会でも部門別の第1位を獲得したのです。
佐藤さんは「河瀬先生はじめ多職種連携のすばらしさを感じました。正直初めは半信半疑でした。こんなに改善するとは想像もしていませんでした」と喜びを語ります。

「口から食べること」が、人間らしい生活と生きる喜びの原点となることを物語る実践、それは「生きることは食べること」そのものなのです。来年1月、この研究会の全国大会が長崎で開催されます。そこでもきっと佐藤さんの発表は大きな注目を集めるでしょう。

歯科の力、多職種連携の力を実感して、佐藤さんはいま河瀬先生たちとともに、石巻圏の多職種の専門家に呼びかけて地域の人々の摂食嚥下「食べる」を支援する「食べる輪」を立ち上げて現在役員を務めています。こうした多職種連携の輪が日本中に広がってゆくことを願ってやみません。

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