「オランピック」の楽しい企て
日歯高木会長の逮捕・起訴
今月号の本欄は、やはり前日本歯科医師連盟(日歯連)会長で現職の日本歯科医師会(日歯)高木幹正会長ら3名の逮捕・起訴という日本の歯科界を揺るがす大事件に触れないわけにはいきません。容疑は「迂回献金」による政治資金規制法違反。国民からは「また歯科が」と金にダーティーな歯科界という印象を与え、11年前の「1億円事件」に続いてふたたび信頼を大きく損ないました。
結局、任期わずか4ヵ月で高木会長は日歯の会長を辞任しましたが、問題は、当の組織が内部からも以前から「違法献金」の指摘を受けながら「問題ない」と強弁し、6月に高木会長を日歯の会長に選んで何ら反省も説明もしていないことです。
国民への説明責任を果たせ
日歯(連)は、歯科医師を守り、国民のための歯科医療を実現するために何が必要で何が問題と考えているのかを、国民に対して真正面から訴えるべきです。そうでなければ「自分たちの利益のことしか考えていない」組織であることを認めることになる。それは、全国で患者さんの健康のために毎日全力で診療している歯科医師の努力を踏みにじる行為でもあります。また日歯(連)幹部はもとより、迂回献金をした(受けた)2人の政治家、政党の責任もうやむやにしてはなりません。
「食べる」を支援する活動展開
さて、中央の政治事件はさておき、歯科の現場では日々患者さんの健康のためにさまざまな努力が繰り広げられています。迫り来る超高齢時代に向けて「包括的ケアシステム」そして「医科・歯科・多職種連携」が急務である、という認識は日に日に高まっています。そして、困難を克服しながら、「食べること」「食支援」に焦点をあて、すばらしいアイディアを発揮して、手作り・手探りの取り組みが始まっています。
「男の介護教室」と「食べる輪」
本誌でもたびたび紹介している、東日本大震災の津波被災地である宮城県石巻市の雄勝歯科診療所。2012年に赴任した河瀬聡一朗所長(37)は、人口が1/4に激減し高齢化率50%を超える「超高齢化地域」での「老老介護」そして男性介護者が多い現実に直面し、昨年「介護食作り」の実習を中心とした「男の介護教室」を市内2ヵ所でそれぞれ5回(計10回)開催し、大好評を博しています(今年度も継続して開催中で、他県や他の地域での開催の支援も行っています)。
また、河瀬氏は今年さらに広域に「石巻圏摂食・嚥下研究会 食べる輪」を立ち上げて「嚥下障害になってみる!」「HOW TO とろみ」「日常場面からわかる嚥下状況と対応の仕方」などの勉強会とともに、研究会の後に、気軽に多職種連携を深める目的で「飲む輪」を開催。地域のなかで「顔のわかる」関係作りが連携の第一歩とこれまた大好評を博しています。
「オランピック」の楽しい企て
河瀬氏はいま、一般社団法人グッドネイバーズカンパニー(清水愛子代表)が主催する、男も女も、老いも若きも、障害がある人もない人も、みんなで遊んで楽しみながら口腔機能を高めてゆく「オランピック」(Oral Health Olympic Games)に参画しています。
これまでに石巻でも2回「プレ・オランピック」を開催し、「笛ラムネ吹き」や鼻の下に貼った海苔を舌で剥がして食べる「黒ひげペロリ」「ジャイアントポッキーレース」など、参加した平均年齢86歳の選手たちは、勝利に向かって燃えに燃えました。
この「オランピック」は来年正式にスタートを予定しています。みなさんの地域でもぜひ取り組んでみてください。「歯科の出番」はたくさんあります。