医療の未来拓く「上流医療」
国民医療費「40兆円突破」!
厚生労働省は9月、2014年度の「概算医療費」が39兆9千556億円(前年比約7千億円増加)で、12年連続で過去最高を更新したと発表しました。労災や自費診療を含めた「国民医療費」が40兆円を突破することは確実です(歯科は2兆8千億で微増)。それは、国民1人あたり31万4千円。75歳未満が21万1千円だったのに対し75歳以上が93万1千円。医療費に占める高齢者医療費の増加が顕著です。
<100歳以上>初の6万人超
敬老の日を前に、厚労省は100歳以上の高齢者が過去最多の6万1568人に達すると発表。調査開始の1963年以来45年連続で増え続けています。80歳以上の人口も1002万人と初めて1千万人を超えて、日本は人類史上最速で長寿・超高齢社会へ突き進んでいます。
8月に男性の世界最高齢とギネス認定された名古屋の小出さん(112歳)は、「パンが好きで、入れ歯はない」と自分の歯でトーストを食べている笑顔の姿が放映されました。
日本病巣疾患研究会の熱気
9月初め東京・日本歯科大学で「第3回 日本病巣疾患研究会」(堀田修会長)が開催されました。この研究会は「患者の全体を俯瞰しながら部分を診る(「木を見て森も見る」)医療」のスローガンを掲げて旗揚げされました。病気の根本原因を絶つ「根本治療」をめざし「口腔と全身」 「咽頭と全身」という視点をもとに、歯科医科が連携(医科のなかの多科の連携も)して真に「目の前で困っている患者さんを治す医療」を追求し、実践しています。
研究会では「根本から日本の医療を変えていこう」という高い志を抱いた研究者、臨床家が2日間にわたって熱心な研究、実践発表を行いました。
口腔感染・病巣疾患と全身疾患
特別講演で、仙台赤十字病院小児科部長の永野千代子氏は「病巣炎症治療をとりいれた小児腎臓病の根本治療」を発表。小児のヘノッホ・シェーンライン紫斑病とIga腎症における、う蝕や根尖性歯周炎、副鼻腔炎、中耳炎などの病巣感染巣との関連をたんねんに追い治療した15年の軌跡を報告しました。
日本大学の落合邦康教授は、「口腔感染と全身疾患:医科歯科連携のセンターピン理論」と題して、超高齢時代における歯科医療の役割の変化と歯周病が誘発する多くの全身疾患、なかでも歯周病菌が産生する酪酸の為害作用を解き明かし「歯周病が老化を促進させる」メカニズムを解明しました。
会員発表では歯性病巣感染や上咽頭、アデノイドの病巣疾患と全身疾患の症例が数多く報告され、同研究会の実践の蓄積と理論の深まりを示しました。とりわけ、6月に自らの歯科医院に耳鼻科を併設した相田能輝氏が「上咽頭のBスポット治療を継承するために耳鼻科を作りました。ぜひに、ぜひに、医院に来ていただきたい」と訴える姿が胸に迫りました。
医療費削減と健康長寿の道
この研究会は、既存の医療界の「慣習や常識」を覆す実践を展開しています。しかしそれは冒頭の医療費問題を根本的に解決し健康長寿の日本を実現する道、すなわち「医療の王道」にほかならないのです。研究会の最後、座談会に登壇したBスポット治療の耳鼻科専門医谷俊治氏は、「50年以上、この治療が医療のスタンダードと信じて続けてきました」と静かに語りました。
口腔は根本治療をめざす「上流医療」の源流のひとつです。口呼吸から鼻呼吸への転換を推進して病巣感染を予防し、確実に患者さんの悩みを解決する医療の創造を目指す同研究会。その志に拍手を送るとともに、研究・実践の発展を心から願います。