生涯にわたって「口」を守る
「超高齢時代」を見据えて
コムネットは歯科に関する新聞雑誌の記事をピックアップして内容をお伝えするサービスを行っていますが、6月は例年にも増して件数が多い月でした。それは日歯連による「迂回献金」とその後の日歯会長選挙をめぐる報道が目立ったこともありますが「歯と口の健康週間」を背景に、超高齢時代に向けての様々な取り組みを紹介する力のこもった記事が登場したのが目を引きました。
「役割増す入院患者の歯科治療 食べる力、治癒力後押し」(中日新聞)、「在宅ケアの行く先 食生活を豊かに」(河北新報)、「歯を大切に 元気で長生きの鍵」(日本農業新聞)など、歯科の役割、医科歯科連携や食支援の取り組みを紹介する記事が並びました。
よい歯でよく噛み健康長寿
同様に歯科学会でも超高齢時代に焦点を定めた研究、実践発表が増えています。5月に開催された第64回日本口腔衛生学会は「良い歯で よく噛み 健康長寿」を掲げ、6月末の第12回日本口腔ケア学会は「口腔ケア維新―職種間連携から施設間連携へ―」とさらに突っ込んだテーマで開催されました。
現在人口の26%を占める高齢者人口は2040年には36.5%に達します。超高齢化とそれに続く人口の急激な減少という日本の未曾有の将来像が否応なく迫っているなかで、いま日本の医療が音をたてて変わり、その中心課題に、口から食べて(経口栄養)病気を治し、未然に予防する「口腔」の役割にスポットが当てられているのです。
口腔の3大機能の維持向上
先頃開催された第33回日本顎咬合学会は「新・顎咬合学」と題して「口腔機能」に焦点を当て「生涯にわたる口腔機能」とくに高齢者の口腔機能の維持、回復という課題に意欲を示しました。呼吸・摂食嚥下・構音という口腔の3大機能を重視し、なかでも「口から食べる」ことが高齢者医療、地域包括ケアの中心課題であり「食べられる口」をつくる口腔ケア・口腔リハビリの普及が急務であることを訴えています。
「オーラル・フレイル」防止を
6月中旬、第29回日本老年学会が開かれ、学会を構成する老年医学会、老年歯科医学会など関連7学会が合同でシンポジウムを開催しました。今回のキーワードは東京大学高齢社会総合研究機構が提唱する「フレイル」と「サルコペニア」。高齢化による「老年症候群」の「虚弱化」(Frail)とその根本原因である「筋肉減弱症」(Sarcopenia)に抗して、栄養・身体・口腔・社会性など、多角的側面から、食べること「食力」を維持・回復・向上させていく医科歯科・多職種連携の必要性が強調されました。なかでも「栄養(食・口腔)・運動・社会参加」の三位一体の取り組みが重要で、それは住民参加で「地域まるごと」健康長寿にチャレンジすることを求めています。
生涯にわたって「口腔」の健康を守ることが健康長寿の基本。日本歯科医師会は3月「オーラル・フレイル防止」の国民運動を展開すると発表しています。「診療所から地域へ」まだ全国で5500施設の「在宅療養支援歯科診療所」の飛躍的増加を心から願います。