「かかりつけ」の真骨頂
超高齢化の「ピーク前夜」
前回、2025年に「団塊の世代」が75歳以上の「後期高齢者」となる「超高齢化時代」の到来に向けて、すでに「序章」が始まっていると書きました。現在でも、日本の全世帯4,600万世帯のなかの2.4軒に1軒が高齢者のいる世帯であり、8軒のうち1軒が独居高齢者世帯である、という現実を知っておかなければなりません。
高齢化とともに病気や要介護者が急増することは確実で、なかでも認知症患者は現在でも高齢者の1割(10.2%)、345万人(「予備軍」を含めると800万人)と推定されています。
45年で人口が2/3に激減
死亡者数も加速度的に増加します。現在年間125万人の人が亡くなっていますが、今後年間150〜170万人が死亡すると予想され、毎年ひとつの県の住民がそっくり居なくなるほどの数です。
その結果人口が減少します。10年後、2025年に日本の人口は1億2,000万を割り込み、2060年になると、現在より1/3減少して(32%減)、8,674万人になると推定されています(国立社会保障・人口問題研究所)。それは遠い未来の話ではなく、たかだか半世紀、45年後の日本に出現するのです。私たちは冷厳にその現実から出発しなければなりません。
歯科が「希望」を拓く武器
ここまで書くと、高齢化と人口減少の先の日本に希望はあるのか、という気持ちになります。確かに厳しい未来予想図です。「黙っていたら」確実にそうなります。
しかし、私たちには「武器」があります。高齢になっても「口から食べて最期まで元気で」と言い切れる「歯科の力」を蓄えています。高齢者が心豊かに、幸せに生涯を全うする姿をみれば、子供たちも自分の将来に希望を見出すことができるはずだ、私たちはそれを信じて前に進んでいきたいと思います。
増大する「歯科の需要」
日本の医療は病院から在宅へ、診療所から地域へと大きく舵が切られています。それに対して個々の開業歯科医院はどのように対応すれば良いのか、それは「生き残り」をかけたチャレンジでもあります。でも、考えてみてください。高齢化や人口減少のなかでも「歯科の需要」は減らないのです。これまで以上にニーズは広がっていきます。むし歯は激減しています。しかし歯が多く保持される口腔内では、歯周疾患の予防、治療、管理の需要は飛躍的に増加します。口から食べる機能、摂食指導への期待と評価は高まっています。また、高齢者にこそ口臭や審美の医療サービスが求められます。
「かかりつけ」がカギを握る
問題は、診療所に来られなくなる人が増えることです。しかし患者さんは地域(在宅や施設)にいるのです。まずは義歯、摂食嚥下など高齢者のニーズに応える「医療力」を鍛えましょう。そして往診ができる準備を整えましょう。認知症に配慮した高齢者や家族に向けたコミュニケーション・情報提供も不可欠です。患者さんはかかりつけ医からの情報を一番信頼しているからです。
そして、何よりも大事なのは現在来院されている患者さんを大事にすることです。患者さんから「かかりつけ歯科医」としての信頼を得ること、それが「次」につながります。元気な時も病める時も高齢でも一生涯患者さんの口腔の健康を守るという姿勢が最大の安心と希望を与えるのです。