口を「健康の入り口」に!
「病巣疾患研究会」の熱気
9月には、各地で学会やイベントが開かれ活況を呈しました。14日東京・八重洲で開かれた「日本病巣疾患研究会」(堀田修会長)の第2回総会もそのひとつ。
定員を大幅に超える120人が参加して口腔感染症と全身疾患との関わりや治療法について熱心に話し合われました。
医科歯科連携のもとに「根本治療」の新たな発展をめざす高い志に満ちた講演や実践報告とともに、上咽頭炎に対する「Bスポット療法」の実技が行われるなど、日本の医療の変革をめざす情熱にあふれた研究会でした。
「木を見て森も見る医療」を
先頃発表された2013年の日本の国民医療費は39兆3千億円。11年連続で「過去最高」を記録しました。しかし癌も心疾患も脳血管障害も肺炎も減らず、腎臓病や糖尿病などの慢性疾患や生活習慣病、免疫疾患、鬱などの気分障害や認知症は年々増加の一途をたどっています。
研究会の堀田修会長(仙台・堀田修クリニック)は、その背景に「細分化型・分析型医療」(対症治療)の限界があり「医科歯科の垣根を取り払い免疫系・自律神経系を2本柱とする『調節系医療』を加えた統合的医療の推進」すなわち「木を見て森も見る医療」への転換を訴えました。
口腔病巣疾患と皮膚病・腎症
今回の研究会ではとくに上咽頭の感染症にスポットが当てられ、慢性上咽頭炎とIgA腎症や掌蹠膿疱症との関連を示す症例も発表されました。
その2週間前、8月28日の「読売」夕刊に、「病巣の扁桃摘出」で「難治性の皮膚病、腎炎改善」という大見出しで、扁桃病巣疾患と全身疾患との関りを特集する記事が掲載されました。
記事では代表的な症例として旭川医大で掌蹠膿疱症患者の扁桃摘出治療で1年後に8割、3年後の9割の患者が完治した例を紹介。上咽頭同様に口蓋扁桃の炎症が腎炎や肝炎、関節リウマチやアトピー性の皮膚疾患など20以上の疾患の原因であるとして、内科・耳鼻咽喉科・皮膚科・外科などの多様な連携の必要性を訴えています。
感染予防の「砦」守る口腔ケア
上中下と縦に連なる咽頭も、広げるとタタミ12畳分といわれる口蓋・耳管・舌を環状に連なる扁桃(ワルダイエル咽頭輪)にしても、炎症を起こし全身疾患の原因となるのは外部から侵入する細菌やウィルスです。それをいかに予防するかがカギとなります。
鼻は元々外気を取り入れる呼吸器なので冷気や乾燥、ゴミや細菌など異物から身体を護る粘膜や襞を備えています。問題は口呼吸によって無防備な口腔から細菌やウイルスが侵入すること。鼻呼吸への転換と口腔ケアによってそれを防ぐことが誤嚥性肺炎や咽頭・扁桃の炎症を予防する一番の方策なのです。
研究会では、歯科から「口腔ケア」のパイオニア米山武義氏(静岡県開業)が「口腔は感染症予防の砦」と題して講演しました(それに先立ち米山氏に今年度の「保健文化賞」が贈られることが紹介され、大きな拍手が送られたことも特記しておきます)。
米山氏は(高齢者への)口腔ケアの目的を@感染予防、A唾液分泌と咀嚼嚥下機能向上に加えて、B精神的安定、「心の安らぎ」をあげました。人生の最期の時まで、健康で口から食べて幸せに人生をしめくくる手助けをする。歯科医療は命と幸せに直結する「健康の入り口」を守る役割を担っていることを力をこめて訴えました。