「復光」と歯科の夜明け
2014年歯科の課題
今年最初のTogetherをお届けします。本年が希望に満ちたすばらしい年になりますように。その願いをこめて歯科界のリーダーの年頭発言に注目しました。日本歯科医師会の大久保会長は「日本は今、第3の新たな国造りの正念場である」と述べ、その柱が医療と福祉と教育にあり、超高齢社会に向けて「医療人として先頭に立って戦う」と表明しました。国の基本は「人」です。歯科のトップが国民の健康を守る決意を示すのはまっとうなことです。
問題はそれをどう具体化し、実現するかにあります。日本歯科衛生士会の金澤会長は「要介護で通院困難な患者に対応する在宅歯科医療を支える連携機能」とチーム医療に歯科を位置づける必要性を訴えており、こちらも「正論」です。
課題は鮮明です。今求められるのは、歯科が本気で、地域医療、高齢者医療への包括連携アクションプランをたて、ただちに行動を開始することにほかなりません。
被災地に学ぶ包括医療
昨年の暮れ、「第2回三陸被災地訪問団」を組織して、宮城県の南三陸町と石巻市を訪問し、被災地でがんばる歯科医師、歯科衛生士の方々から被災当時の体験や復興の現状、震災後の地域医療の進展、問題点について多くのことを学びました。
訪問団の統括石巻市雄勝町の河瀬聡一朗氏は、大津波で歯科無医地区となった雄勝に飛び込み、仮設歯科診療所の所長として医科福祉介護と連携しながら旺盛な地域医療活動を展開しています。若者が離れた雄勝の高齢化率は43.3%、日本の超高齢化を先取りする現実を前に日夜大奮闘しています。私たちが知らなければならないのは、今被災地で起こっていること、行われていることは、これから日本のすべての地域にあてはまる課題だということです。
NHK「逆境からの再出発」
昨年10月25日に放送されたNHKスペシャル「逆境からの再出発−高齢者を支える医師たちの挑戦−」に衝撃を受けました。番組は大津波で医療が崩壊した陸前高田と石巻の医療現場に密着して、人口流出と高齢化に挑む医療人の奮闘を描いています。
県立高田病院では、3.11の直後6月に医療福祉関係者会議を開き「地域に残された高齢者をどう支えるのか」を話し合いました。医療体制が崩壊して患者の行き場がない。医師たちは入院患者を自宅に帰し、やむにやまれず訪問診療に出かけました。しかし、訪問先で目にしたのは病院よりも生き生きした高齢者の姿だったのです。
寝たきりの96歳の女性は舌に黒い苔が生えて病院食が不味く手で払っていました。それが口腔ケアで食べられるようになり、97歳の誕生日には自宅で赤飯食べカラオケを歌うまでに回復していました。同じく肺炎で入院し退院時には起き上がれなかった80歳の男性も自宅で理学療法士による週2回のリハビリを受け歯科医師にガクガクする義歯を調整してもらい、その場でりんごをおいしそうに食べるシーンは、連携の力、そして歯科の役割を雄弁に物語っていました。
日本発「世界標準」へ
高田病院の石木医師は言います。「高齢化は日本のどこでも同じ話。世界中がそう向かっている。今被災地でやっていることが世界標準になる可能性も十分にある」と。
被災地の復興は日本の未来と世界に直結しています。国の大元である「人」の健康を守り地域を元気にする先頭にオールスタッフの医療人が立っているし、さらにその中で、口から食べて元気にする歯科の役割が鮮明になっています。被災地の「復光」すなわち復興の光はほかならぬ歯科の「夜明け」に繋がっているのです。