人の「物語」に寄り添う歯科医療
「歯の学校」開催中!
先ごろ、歯科医師会が一丸となって情報発信をしている大阪・吹田市を訪ねました。阪急南千里駅前に、昨年9月にオープンした「吹田市口腔ケアセンター」。訪問した木曜日の午後、市内の小学3年生3クラスを集めて「歯の学校」が開かれていました。校医と6人の歯科衛生士による「噛む・飲み込む機能」の話と「かみかみ実習」。パンとおかきを食べ、咀嚼カウンターでそれぞれ噛む回数を計測しあう賑やかな45分授業でした。
ワクワク「歯科ワールド」
センターでは、常駐する歯科衛生士による相談コーナーをはじめ「赤ちゃんの歯の広場」「障がい者への健診と指導」「中途障がい者のための健口指導」「介護家族向け講座」「お口の健康体操教室」「高齢者等の口腔ケア相談」などの講座を開催、妊婦・乳幼児から高齢者まで、内容も摂食嚥下、口腔と全身の健康との関わりから介護までを網羅し全市民を対象に口腔ケアの情報発信を行っています。フロア全体がワクワク楽しい「歯科ワールド」なのです。
30歳以上に無料歯科健診
吹田市歯科医師会(千原耕治会長)の谷口学監事(62)はこのセンター設立の立役者。氏は「この施設は、長年にわたる歯科医師会活動の努力の結晶」と語ります。市では18年前から30歳以上の市民全員を対象に「成人歯科健康診査」を実施。毎年およそ2万人が市内160軒の「協力歯科医院」で健診を受けています。さらに、2000年に始まった「健康日本21」の目標値(10年後8020:20%以上、6024:50%以上)を達成するには最初の永久歯である6歳臼歯を守ることが不可欠と考え、平成12年から「6歳臼歯健診」を実施しています。
全員で行う「出前講演」
なかでも出色の活動は歯科医師会の法人設立10周年記念事業として2004年にスタートした「出前講演」です。「顎関節症ってどんな病気?」「ずーっとおいしく食べるために」(摂食嚥下)など講演11テーマと「いびき」「キシリトール」「唾液の働き」など「単品メニュー」を26本合計37テーマを準備。「200人の歯科医師会員が全員参加で、ベテランから新人まで誰でも出向いてお話しできます。10人以上の団体、グループで講演1本に単品2、3題を選んで申し込んでいただき、年間20回以上出前をしているんですよ」と谷口氏。
吹田市民の「生活の中へ」
こうした「外」に向かう活動を組織全体で行うことは並大抵ではありません。まず自ら動いて地道に実績を作り、話し合いの場を設け、行政と折衝しともに健康な市民生活をめざして施策を立案し実現させてゆくねばり強い努力の賜物です。そして会員が力を合わせ一丸となって地域に向かってゆく団結力、それが病診連携・医科歯科介護福祉の連携へとつながり、迫りくる未曾有の超高齢社会を迎え撃つ原動力となるのです。
「歯科医療は生活の中の医療です。診療所を出て、人々の生活の中から歯科を捉えなおすと、そこには『物語』がありお金では換えられない喜びや楽しみがあります。その醍醐味を全ての歯科仲間に味わってほしいと思っています」。母校大阪大学歯学部の同窓会長でもある谷口氏は今月末同窓会の臨床セミナー『最期まで人として生きること食べること』を企画。そこには「人の『物語』に寄り添う歯科医療」をめざす確かな志が貫かれています。
◆吹田市 口腔ケアセンターHP :
http://www.ha-suita.com/carecenter.html