日本の医療に「歯科の風」を
●2020東京五輪決定
9月は大きな出来事が相次ぎました。2020年東京オリンピック招致が決定。56年ぶりに国立競技場に聖火が灯ることになりました。IOC総会での情熱あふれるプレゼン、なかでも高円宮妃の「感謝」、滝川の「おもてなし」とともに、「私が今ここにいるのはスポーツに救われたから」と語る被災地気仙沼出身のアスリート佐藤選手のスピーチが人々の胸を打ちました。
安倍首相のでたらめな福島原発「安全宣言」には鳥肌が立つ思いでしたが、国際公約となった原発対策と被災地復興に本気で、全力で取り組み、文字通り「オールジャパン」で国民全体が喜びあえる東京五輪になることを期待するとともに、これを機に緒についた日本のスポーツ歯学の飛躍的前進を願わずにはいられません。
●風立ちぬいざ・・・・・・
台風18号が猛威を振るい各地に爪痕を残して列島を駆け上がりました。その台風を迎え撃つかのように「口腔から全身の健康を科学する」をテーマに東京デンタルショー2013が開かれました。展示には、時代の変化や社会の要請に応える意気込みが感じられるものが多く「歯科の新時代」を予感させられました。台風が去って「風が変わった」のです。
●「超高齢化」に向き合う
その特徴の第一は、刻々進んでいる「超高齢化」に向き合う歯科医療をサポートする「口腔ケア」や「訪問診療」を支援する製品開発に力を入れた企業が多かったことです。9月に発表された日本の高齢者(65歳以上)人口は3千186万人。昨年より112万人増えて人口の25%、4人に1人が高齢者となりました。2050年になるとさらに「2.5人に1人」にまで高まります。歯科医院や病院に通院できない、在宅、有病、介護の患者さんが「あたりまえ」になる時代。それに歯科の体制作りが急務です。
●口腔と全身との関わり
第二に、「口腔から全身へ」。高齢者医療には全身疾患を視野に入れた歯科医療が求められ、医科や介護との連携、職種でいえばケアマネ、ヘルパー、栄養士や理学療法士など多くの方々とのチーム医療が活躍する時代です。その基礎に全身疾患の知識が不可欠です。
●口腔ケアで誤嚥予防
ご承知のとおり、日本人の肺炎による死亡者が脳血管疾患を抜いて、ガン、心疾患に次いで死因の第3位に浮上しています。亡くなった人の97%が65歳以上。死亡原因の多くは細菌でその3割が口腔内や皮膚に常在している肺炎球菌と考えられています。
厚労省は、高齢者の誤嚥性肺炎予防のために口腔ケア事業を推進して2025年度までに医療費1千億円の抑制を図る計画を策定しました。8020達成者の医療費が2割少ないという調査結果にもあるように、全身の免疫力のアップとともに、口腔ケアと感染対策、そして誤嚥を防ぐ口腔機能訓練が決定的な役割を果たすと考えられます。
歯科医療の充実が全身の健康、すなわち「健康寿命」を伸ばして医療費を抑制するカナメなのです。
「風」を受けて今こそ「歯科が動くとき」。日本の医療に「歯科の風」を吹かせる絶好のときを迎えているのです。