「悪夢」を「吉夢」に変える
●「ZAITEN」7月号
たびたび歯科の特集を組む経済雑誌「ZAITEN」(財界展望新社)7月号は、表紙に「歯科医『倒産ラッシュ』の悪夢」と赤字で大きな見出しをつけて「歯科大学・歯学部『最終サバイバル』」、20ページの特集を組んでいます。項目を整理すると、(1)「中小企業金融円滑化法」が終了し経営の厳しい歯科医院が倒産の危機に直面している (2)「医療Gメン」指導医療官による強圧的な監査の実態 (3)定員割れ学費値下げの歯科大・歯学部「最終サバイバル」 (4)歯科の新市場インプラント・審美・矯正・訪問診療の現実と問題点 (5)歯科のクレーム対策。タイトルで内容は想像できると思います。
●「週刊ダイヤモンド」
「ZAITEN」に続いて、これまた表紙に「もうダマされない!歯医者の裏側」と激しい言葉が踊る「週刊ダイヤモンド」6月15日号が店頭に並びました。経済雑誌だけにデータは「ZAITEN」と重なります。こちらはA4で27ページ。歯科医療費横ばい、むし歯減少時代に歯科医師10万人超で歯科医院はコンビニより多い。経営悪化、倒産数過去最多、1日5件開業5件廃止で医院数頭打ち。歯科大受験生離れ経営難、国試受からない・・・。誌面には、こうした歯科界の厳しい現実とともに、正しい治療法や歯を守る最新技術、セルフケアについても丁寧に説明し、アンケート調査に基づくインプラント対応医療機関444施設をリストにして、実績や設備、治療法や費用を紹介しています。
●我々が読み取るべきもの
さて、問題はこれらをどう読み取るかということ。環境悪化の現実を「経済」の眼で俯瞰する意義はあります。しかし、一段と激しさを増す「歯科バッシング」の一環という受け止め方が一般的かもしれません。また、現在の厳しさを厳粛に受け止めて前進の糧にしようという前向きな方も多いと思います。この2誌には残念ながら「現状」を突破して「未来」を拓く具体的な展望は示されていませんが、歯科の眼から明日に生かせる素材をいくつも見出すことができます。たとえば、「ZAITEN」で取材に答えている高齢者医療の米山武義氏やインプラントの小宮山彌太郎氏のコメントのなかには、将来の課題と希望が読み取れます。
●「悪夢」を「吉夢」に変える
もうひとつ大事なことは、この雑誌は書店に並び一般のビジネスマンが読んでいるということです。「ZAITEN」の発行部数は公称6万部、「週刊ダイヤモンド」は10万部あります。歯科界はそれだけ注目されている。誤解や偏見も多いけれども、世の中からこんなふうに見られ評価されている、それを知るだけでも価値があります。
たとえば「週刊ダイヤモンド」の「いい歯医者 悪い歯医者」。「危ない歯医者・医療機関を見分ける7カ条」があります。その「7カ条」とは、(1)患者の話を聞こうとしない (2)治療の欠点や危険性を説明しない (3)治療計画を説明しない (4)自由診療を強引に勧める (5)保険診療以外の治療を完全否定する (6)セカンドオピニオンを嫌がる (7)院内に清潔感がなく、器具を使い回す の7つ。実に7条件のうちの6つまでが説明、インフォームド・コンセントすなわちコミュニケーションのテーマで、この逆をやれば「信頼される良い歯医者」になれるということです。そういう視点で2誌をみるとそのなかにも「悪夢」を「吉夢」に変えるヒントがいっぱいです。