医歯薬介護福祉の連携を
●第30回「CATの会」
今年で30回目を迎えた「公衆歯科衛生研究会」 (通称「CAT=ネコの会」岡崎好秀代表)に参加しました。この会には全国で地域保健活動を実践している歯科医師・歯科衛生士をはじめ、医師、保健士、教師、栄養士など200人近くが参加し、各地の実践や研究成果を交流しあいました。
やないあつ子氏による「健康腹話術」のグループワークに続いて一般演題が9題、「歯科医師が憧れの仕事であり続けるために」(奈良・打谷美香氏)、「替え歌歯科医カンボジアに行く」(岐阜・稲葉幸二氏)、「清涼飲料水を作ってみよう」(九州大・比良松道一氏)、「鼻の穴はなぜ2つあるのか?」(福岡・今井一彰氏)、「アイとイリコは世界を救う♪」(大分・柴田真佑氏)「荒れたクラスをたてなおす方法」(長崎・福田泰三氏)など、児童虐待や、呼吸と「あいうべ体操」、食育で学校や地域を変えた歯科公衆衛生、地域医療、教育の現場で健康づくりを推進しているユニークでパワフルな報告が続きたいへん盛り上がりました。
●最期まで人間らしく
特別講演が2題。NTT東日本関東病院の稲川利光氏が「その人らしさを支える−リハビリの心と力−」と題してリハビリ現場の奮闘を紹介しました。稲川氏は「リハビリの語源はRe(再)-Habilis(適)にあり、その人にとって一番ふさわしい状態になること。生活再建のために、疾病治療(予防)-栄養管理(体と心の栄養)-運動(リハビリ)の『3つ輪』が要である」と強調し、医師・看護師・セラピスト(PT/OT/ST)・ソーシャルワーカー・歯科医師・歯科衛生士などの専門職と家族や地域が力を合せて「患者さんが人間らしく生きる権利を守っていこう」と訴えました。
稲川氏は、脳梗塞と認知症で寝たきりだった患者さんの看取り紹介して、「最期まで口から食べること」の大切さ、そして一緒に食べるなど、かかわること、手を添え心を添えることが大切と語りました。
福井県名田庄診療所長の中村伸一氏は「地域に"寄りそ医"20年 地域住民と診療所医師の強くて温かい絆の物語」と題して、人口3千人の名田庄村の診療所に飛び込んですすめてきた「家で逝く」看取りの医療の経験を通じて心に刻んだ地域の人々とのふれあい「支えあい」「絆」の大切さを強調しました。
今回の「ネコの会」でも、医科・歯科・介護・福祉や教育の連携の必要性とともに、命と心を支える歯科の役割、力の大きさを学ばされました。
●「2025年問題」に向け
「2025年問題」がクローズアップされています。日本の高齢者人口(65歳以上)は昨年9月の時点で3千万人を突破し(3074万人)、総人口に占める割合(高齢化率)は24.1%(4人に1人)を占め、「超高齢化社会」(21%以上)に突入しています。
「2025年問題」とは、この年に高齢者が3500万人を越え、「団塊の世代」が75歳以上の「後期高齢者」に達し、医療費など社会保障費の急激な増加が予想され、それにどのように対処するのかという課題が突きつけられているという問題です。数字の羅列で現実感が乏しいかもしれませんが、日本の人口が減り、自分で動けない人が飛躍的に増えることが予想されるということです。
国の政策は「施設から地域へ」「病院から家庭へ」とシフトしています。医療福祉に限らず、飲食も商店もサービス業も、抜本的な対応が求められます。訪問診療の必要性もさらに高まり、医療福祉全分野の連携が必然の時代を迎えるということです。
生きる根幹「口から食べること」は、超高齢化時代に最期まで人間らしく生きる要です。全国10万人の歯科医師、6万8千歯科医院の出番です。