マネジメント力アップ!
●歯科医院に「経営力」を
歯科医院の経営環境が年々厳しさを増す中で、経営に成功する医院と低迷する医院の格差が広がる二極化・三極化が進行しています。その違いはどこから生まれるのか。それは周囲の環境を云々する前に、自院の、言い換えれば院長の経営手腕の違いを考えなければなりません。経営を科学的に分析し、安定と成長の路線に導く「経営戦略」の重要性はいくら強調しても足りないくらいです。マネジメント能力の差が「経営力の差」に直結しているからです。しかし個人開業医には、一人で何役もの重責がのしかかっています。「治療に専念したい!」これが多く院長の本音ではないでしょうか。しかし経営は「待ったなし」。ならば自らの経営力をアップさせるしかありません。
●歯科戦略MGスタート
先頃、35年の歴史、導入1万社の実績をもつ「戦略MG(マネジメントゲーム)」、ゲームをしながら会計力と戦略思考力を鍛えるMGの歯科版「歯科戦略MG」の発表会がありました(開発:シグマブレイン株式会社)。1テーブル6人1組で他のプレーヤーと競いながら、ドクター1人、スタッフ1人ユニット2台で開業するところから医院経営をシミュレートしていきます。患者やスタッフの数、看板や研修参加までポイントになり、それぞれ入出金を仕分けし、様々な戦略を実行しながら1年間経営して決算書まで作るゲーム。筆者も「コムネット・スマイルデンタルクリニック」の院長になって医院を経営しました。「自分の歯科医院で今何が足りず、何が壁になっているのかがこのゲームで見えてきました」。開発に係わった歯科医師の小出一久氏の言葉です。スタッフとも一緒に遊びながら医院の現状を知ってもらう教育研修にもなるMGは、歯科医院のマネジメント力を実践的にアップさせる強力な助人になるでしょう。
●始まりは野村レポート
歯科の世界で経済原則や競争原理が謳われ始めたのは80年代で、その後1992年に野村総研が「わが国における歯科診療報酬体系の基本的なあり方に関する研究」(野村レポート)の中で、「歯科の患者数は2005年でピークを迎え、(保存・補綴中心の医療では)歯科医院の収支は2010年には現在の40%に落ち込むおそれがある」というショッキングな予想を発表したことで、危機感が一気に広がりました。1998年の「厚生白書」に「医療はサービス業である」と明記され、2000年には医療分野でも市場開放が始まり、それまで手厚く護られてきた「護送船団方式」から「黒船来る」自由競争の時代へと転換していきました。
●「歯科マーケティング」
危機感を背景に、治療技術の研鑽や最新機器の導入が促されるとともに、増患増収のための広告・宣伝・販売促進という「マーケティング」の概念が導入されました。大手コンサル会社など外部から参入した企業による(自動テレマーケティングなど)集客ノウハウ、拡販システムが登場し、一部は破綻して消えていきました。それは「医療」として「いかに顧客(患者さん)が必要とするものを提供するか」というマーケティング本来の目的を忘れてはならないという歯科界への厳しい警告でした。
●そして「イノベーション」へ
今年7月「日本歯科イノベーション協会」が旗揚げし、税理士や公認会計士など職業会計人が中心となって、歯科医院のデータを収集、分析しそのなかから「成功する歯科医院のモデル」を見つけ出そうという試みがスタートしています。このイノベーション「革新すること」もまたマネジメントを構成する重要な柱の一つです。
●「マネジメント力」アップへ!
マネジメントは『もしドラ』(2009年に出版されミリオンセラーになった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」)で流行語になり、本家ドラッカーの『マネジメント』(エッセンシャル版)も先頃100万部を突破しました。いよいよこれからです。「歯科医療」のクオリティを磨き、歯科の目的と社会的使命を果たすなかで経営向上を達成するために、その資源である、ヒト・モノ・カネ・情報をどのように活用するか、そしていかに顧客創造(マーケティング)や革新(イノベーション)を行ってゆくかというチャレンジです。マネジメント力を高め、厳しさを突破し、わくわくしながら夢を実現する経営戦略をともに構築していきましょう。