みせよう〈歯科の底力〉
●「今年の桜」に寄せる思い
桜前線が東北地方をグングン北上しています。東日本大震災から1年、昨年に思いを馳せ、特別の思いでこの季節を迎えている人も多いと思います。被災地の岩手・陸前高田では「大震災の津波の到達ラインに桜を植えてつなぎ、未来の世代に教訓をつないでいこう」という「桜ライン311」の取り組みが進められています。
筆者は4月初め、福島県いわき市の中学生が九州・福岡市の公園に桜の木を植えるイベントに立ち会いました。その中学生は「いわきでも3.11に1000本の復興祈願の桜を植えました」と震災復興に寄せる思いを語っていました。
桜には、春の命の息吹が詰まっています。季節に呼応するように歯科の世界でもさまざまな「思い」をつなぎ、明日に希望をつなぐ取り組みが続きました。
●震災復興チャリティ講演会
東日本大震災から1年の3月11日、横浜の鶴見大学で「3.11 Facebook発 震災孤児支援チャリティ講演会」が開かれました(Together200号で会員の森永宏喜氏に寄稿していただきました)。スタディーグループ(Club 22)のメンバーを中心にフェイスブックで呼びかけて実現した復興支援イベントで、短期間の準備にもかかわらず80人が集まり、義捐金も210万に達しました。会場にみなぎっていたのは、大震災に被災し孤児となった子ども達に教育の機会をプレゼントしたいという歯科関係者の「熱い思い」でした。
●噛める入れ歯「歯科の勝利」
これより先、3月初めに神戸で第29回「公衆歯科衛生研究会」が開かれ、予防歯科や食育、地域歯科保健活動に取り組んでいるさまざまな業種から130人が参加。例年にも増して熱気あふれる研究会となりました。なかでも「1口30回噛んで105歳児!」の福岡・f地(しょうち)三郎氏の講演・パフォーマンスは、噛むことが、脳・体・心の健康維持・増進にとってどれだけ大事なことかを、百の理屈よりも雄弁に物語っていました。
実は、75歳で総義歯になったf地氏の健康の源は「噛める入れ歯」。主催者の岡山大学・岡崎好秀氏は、それこそが「歯科医学の勝利」であり「先生は歯科界の宝、日本国民の宝」と絶賛しています。それは、歯科が復興支援に力を発揮するとともに、日本全体を元気にする力の一端を担っていることの証明でもあります。
●「歯科の底力」をみせよう
今年の春は、「歯科の力」、そして歯科に携わる「歯科医療人の力」を実感する季節になりました。ここで、皆さんに改めて呼びかけたいと思います。昨年の楽天イーグルス・嶋基宏選手の言葉「見せましょう、野球の底力を!」の「野球」を「歯科」に置き換えて、「歯科の力」、「歯科医療人の力」を見せてあげましょう。「見せる」材料は歯科にはたくさん揃っています。患者さんや地域の人が喜ぶことなら何でもいいのです。外に向かって、まず「一歩」を踏み出し、自ら動いて行動を起こしましょう。動けば必ず変わり、元気になります。