歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

歯科に寄せられる期待

●13万人が避難所生活

東日本大震災から1ヵ月半が経過し、復興への歩みが開始されている。 新年度もはじまり、桜の開花が被災地にも春の訪れを告げている。
しかし、被災規模が大きすぎて仮設住宅の建設が遅れており、各地に点在する2千4百ヵ所の避難所に今なお13万人の被災者が厳しい避難生活を強いられている。
4月12日世界最悪の原発事故「レベル7」に引き上げられた福島第一原発事故の今後如何では、さらに「計画避難」の地域が広がる可能性もあり、地震・津波・原発災害から復興するために、全国民的な支援が求められている。

●「口腔ケア」連日紙面に

3月20日付の「朝日」を皮切りに、新聞各紙は被災地における口腔ケアの大切さを報道している。「被災したら 歯磨き二の次にせず」(北国新聞 3・25)、「感染予防に歯磨きを」(朝日 3・27)、「口腔ケアで感染症予防」(読売 3・30)、「避難所でこそ歯磨き」(読売 4・7)、と繰り返し口腔ケアの重要性を説いている。
今までに、「命を守る口腔ケア」の重要性がこれほど強調されたことはない。それが、1995年の阪神大震災で「震災後」に亡くなられた方々から学んだ悲痛な教訓である。それが、歯科関係者のみならず、一般紙(一般市民)まで歯科の役割が認知されていること示している。
また、「助かった命守る」と定期的に被災地を巡回して口腔ケアを指導している山形県歯など、歯科医療人としての使命感に基づく献身的支援活動も大きく紹介されている(山形新聞 4・15)。

●「震災関連死」防ぐ支援を

しかし、被災現場では悲しい事態も進行している。「朝日」4月19日付1面トップ。「『震災関連死』相次ぐ」の見出しで、避難先で亡くなった高齢者が、気仙沼、釜石、陸前高田、福島でこれまでに合計56人に及び、今後関連死の認定が急増する可能性が高い、と報じている。
愛知、徳島、広島など各地から何台も訪問診療車が駆けつけ、被災地を訪れた日歯大久保会長も「最大限の支援」を約束している。身元確認にのべ5百人が派遣され、被災地での診療に7百人が登録されているというが、現地では「歯科の支援が届かない」という声が強い。
阪神大震災における「震災関連死」の4人に1人が肺炎による死亡で、誤嚥性肺炎が多く含まれていた。今回の震災には、医療界が一丸となって早急に支援体制を築くことが求められている。歯科界に寄せられる期待はかつてなく大きい。

●支援と「持ち場」での奮闘

その期待に応えて、歯科界は、より積極的に持てる力を発揮して支援することが求められるが、同時に大事なことは、命を守り、生きる意欲を育む歯科医療の役割は、日常の診療活動でこそ生かされ、貫かれるべきである、ということである。
全国6万8千の歯科医院には、毎日130万人の来院者があるが、その人々に1本の歯の大切さ、噛んで食べることの大切さ、さらに口腔ケアの大切さを知ってもらおう。そして口腔ケアのためには、セルフケアとともに、歯科医院でのプロケア、定期健診の必要性を訴えよう。
地域のなかで「命を守る歯科医療」、そして「定期管理型」「ヘルスプロモーション型」などさまざまな予防歯科を進めてゆく出発点としたい。対象は地域のすべての人々である。
「歯科の力」「歯科の役割」に誇りをもって、原点に返って力強くスタートする春にしよう!

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