口腔から「全人的」健康へ
●患者とともに過ごす歯科治療
11月22、23日の両日、川口市で日本ヘルスケア歯科研究会の「ヘルスケアミーティング2009」が開かれ、コムネットも積極的に参加しました。研究会創立以来11年、「予防ブーム」の時代を過ぎて、「歯科の2大疾患」を超えたターゲットを視野に入れた地道な実践が積まれていることを実感する、意義深い研究集会でした。
20年来う蝕と歯周炎の予防・管理のメインテナンスに努力を傾けている神戸・大西歯科の藤木省三院長と4人の歯科衛生士は「患者とともにすごす歯科医療」と題して長期にわたるメインテナンス来院者の「見えていない問題」に向き合ってきた経験、約90人の患者の「変化」を報告しました。口腔内の状態は、病気や全身状態、成長や加齢、家族や生活環境、生活習慣等の変化によってさまざまな影響を受けています。口の中は人生の縮図。「歯科医療」が担う範囲を模索しながら、まるごとの患者さんに向き合い、記録をとり、健康を守り育てる努力をする姿勢は、今後の歯科医療が進むべきひとつの方向を示しています。
口腔と全身の健康との関わりは、歯周疾患と糖尿病の関連をはじめ以前から指摘されながら、歯科からのアプローチは極めて弱いのが現状です。全身の健康を「診る」視点を強めること。それこそが歯科の役割と可能性を大きく拓く道なのです。
●「口腔ケア」が医療の可能性拓く
その前日の11月21日、宇都宮の第6回日本口腔ケア学会に参加しました。テーマは「口腔ケアにおける機能的医療連携の創造」、医科や介護関係からの熱心な参加者が多く、もっと歯科からのアプローチがあれば、という思いを強くしました。
学会のなかで、口腔ケアを行う前提である「口を開くこと」において、通常のリハビリでは回復しない高度開口障害を伴う「レヴィー小体型認知症」に対して、Medicalパタカラが開口障害を改善した症例が報告され、注目を集めました。
78歳の女性。徘徊や妄想が著明になり、レヴィー小体型認知症と診断され、寝たきりに。要介護5、ADL全介助、高度の開口障害で経口摂取困難の患者さんに、Mパタカラを1日4回、1回20分咥えるリハビリを行ったところ、1週目で開眼、開口、2週目で追視、5週目で舌の自動運動、8週目でスポンジブラシで口腔ケアが可能になり、表情や精神面での改善もおこりうる、という画期的な報告でした。
口腔は「全身の健康の入り口」であり「健康のカナメ」です。口腔ケア学会をはじめ、他の医科の学会への歯科からの積極的な参加、共同研究、実践が求められます。歯科がイニシアチブをとって「医療連携」を強めることは医療全体の発展に大きく寄与するはずです。
●歯科の未来描く「笑顔創造空間」
会員情報誌Together2009年12月号の“インタビュー”に登場していただいた静岡県菊川市のかわべ歯科、川邉研次氏の診療は、まさにすべてが「口腔から全身へ」「歯科医院から笑顔と健康を創造する」活動そのものです。氏は「姿勢咬合」の理論から、心も体も健康を蝕まれている現代人、なかでも未来をになう子どもたちの健やかな成長を応援する診療を体系化し「姿勢咬合セミナー」として18年展開してきました。
彼は言います。「保険制度に縛られて、削って詰めて、病気を増やす治療をするのではなく、ほんとうに『健康』『美』を求めて、明るく前向きに元気に生きる力を与える医療を実践すれば、世の中が変わる。歯科医療が日本の未来をつくる。そう考えるとワクワクしてきます。歯科の未来は明るいですよ」。
そのとおりです。患者さんの健康増進に正面から向かっていく姿勢が、絆を強め「信頼」をうみ、経営向上にも直結するのです。「歯科ができること」は無限です。ターゲットを広げ、顎、頭と顔、口から続く消化器、呼吸器、骨、血管、神経、免疫…人間の心と体すべてに関連しています。そこにチャレンジしない手はありません。歯科の「潜在能力」を眠らせておくのはもったいない。それはイコール「歯科需要」も喚起します。この時代だからこそ、患者さんが一番求めている価値、全人的な「健康」「美」を実現するために、自信を持ってあなたの、みんなの力を発揮していきましょう。
歯科の未来は明るい!行動すれば必ず変わります。