草莽崛起(そうもうくっき)の「志」を掲げて
●2006年の年頭にあたって
新しい年がスタートしました。年末年始は記録的な豪雪、耐震データ偽装事件、「ライブドアショック」と、穏やかならざる出来事が多発していますが、今年がコムネット・デンタルサポート会員の皆様、読者の方々にとって、希望に満ちた前進の年になることを心より祈念いたします。
今年の日本歯科新聞の「今年の一文字」の特集で、筆者(菊池恩恵)は「志」という文字を選びました。日歯連事件を含めて、国家資格をもつエリート(選良)や、「優良」と言われてきた大企業による、個人や組織の利益、エゴイズム最優先の犯罪行為が頻発するなかで、現代人に求められているものが、他者を思いやる温かい「心」であり、それをさらに高めた「志」ではないかと感じていたからです。
幕末の思想家、吉田松陰の言葉に「志を立て、以って万物の源をなす」という一節があります。志こそが人間社会を前進させ、志がなければ人は現実に妥協し、組織はその存在意義を失うのです。
●「志」とはなにか?
では「志」とは何か?もちろんそれぞれの「志」があっていいのですが、ここで昨年出版された1冊の本を紹介します。
『未来を拓く君たちへ』(田坂広志著・くもん出版)。著者の田坂氏は若い世代に対して「どうすれば、自身の未来を切り拓いていくことができるのか。どうすれば、目の前に聳え立つ、人生という名の山を登っていくことができるのか」と問いかけ、その答えとして「『志』を抱いて生きること」だと言い切っています。
「志」とは、「与えられた人生において、己のためだけでなく、多くの人々のために、そして、世の中のために、大切な何かを成し遂げようとの決意。」なのだ、と私はこの田坂氏の「志」に共感します。
●歯科にとりくむ原点
「歯科医療」は、口腔内の硬軟両組織における疾病治療や予防にとどまらず、全身の健康に直結しています。さらに、口腔の機能である呼吸する・食べる・話すなどの生命維持にとって根幹をなすADL(日常生活動作)、笑う・表情等の表現と意思伝達の機能とも併せて、人間のQOL(生活の質)全体に直結する、大切な領域を対象にしています。
歯科の世界を選んだドクターやスタッフが、その仕事に向かう初心、「原点」には、むし歯や歯周病に苦しむ患者さんを救いたい、予防に努めたい(応援したい)という思いやりの「心」があります。その「原点」を「志」に高め、診療室の枠を超えて地域社会や世の中全体に対して様々な活動を行っている人士もまた数多く存在します。
●草の根からの医療改革
「口腔から全身の健康へ」というスローガンを掲げて、訪問診療はもとより、施設や病院と連携している歯科医院があります。「食育」に取り組む歯科医院もあります。また「子育て歯援隊」や「笑顔創造空間」と銘打って、口腔分野からの子育て、健康づくりの運動を提起するパワフルなドクターもいます。それぞれ「志」を掲げ、地域の人々の「笑顔」のために、力を尽くしている尊敬すべき方々です。
会員情報誌Together2006年1/2月号『INTERVIEW・vol.132』で紹介している、前田亨・朝子先生夫妻も、自院で成果とノウハウを蓄積したTC(トリートメント・コーディネーター)を、NPOを設立して全国に広め、患者さん本位の情報提供や相談を積極的に展開するという、大きな挑戦を続けています。
まさに「草の根」からの医療改革。私たちはこうした「志」を掲げた多くの人々とともに、私たち自身、「草莽崛起」(そうもうくっき=吉田松陰が日本の改革を志のある民衆の一斉蜂起に求めた言葉)の一草として、今年も志高く奮闘してまいりたいと思います。
お知らせ:
おかげさまで弊社は、平成17年度新宿区優良企業表彰において「優秀賞」を受賞いたしました。