コンシェルジュのいる歯科医院
●コンシェルジュ大活躍
以前から、ホテル等でのコンシェルジュ(Concierge)の活躍は目にしていますが、最近ではホテルに限らずあちこちで耳にするようになりました。コンシェルジュとは、中世ヨーロッパで、修道院や教会でろうそくに火を入れるコムテ・デ・ジュルジュ(ろうそく担当の伯爵)が起源といわれ、その後「守衛」「門番」全体をコンシェルジュと呼ぶようになり、鍵を管理する(鍵を渡す)役割をさすようになったといわれています。
現在では、ホテル等のサービス業やデパート、人が多く集まる駅や空港などで客の要望に応えてきめ細かなサービスや情報を提供し、顧客満足のためのサポートを行う仕事、と理解されています。
●歯科医院にもConcierge
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」今年7月、東京・銀座にオープンした「天井久代デンタルクリニックin Paradise」。ドアを開けると、若くスマートな男性がにこやかに迎えてくれます。彼はこの医院のコンシェルジュ、患者さんの接遇専門のスタッフです。
まず訪問者をウェイティングルームに招き、お茶を提供します。「リラックスして気持ちよく治療やカウンセリングに臨んでいただくことが、良い診療につながると思います。」
コンシェルジュとしての仕事はさらに、銀座のレストランの紹介やショッピングの案内もできる、一歩進んだサービスを担っています。歯科医院の概念をやぶる「アメニティ空間の創造」という斬新な意図がうかがえます。
●コンシェルジュ医師協会誕生
情報誌によると、アメリカでは昨年「全米コンシェルジュ医師協会」(ASCP)が設立され、いくつかの病院で「医療コンシェルジュ」が活動しています。
アメリカではER以外、医者の診察を受けるには(医科でも)予約が必要で「3週間先まで診察を受けられない」実態があります。「病院は経営難からできるだけ患者を増やす傾向にあり、順番を待つ牛のようだ。質の高い医療は医師と患者の深い信頼関係から生まれる」(ASCP会長)という理念から設立された同協会の動向は、私たちにとっても見過ごせません。
むろん、アメリカの医療保険制度(公的保険が高齢者=メディケアと低所得者=メディケイドに限られ、国民の70%が民間保険に加入しているが、約4千万人は無保険状態にある)の問題を抜きに語ることはできません。しかし、公的保険の限界、破綻が危惧される日本の医療にとっても、単に他院との「差別化」や「独自性」を強めるためという目的を超えて、患者さんと歯科医院の信頼関係構築のアプローチとして注目すべきでしょう。
●患者さんのQOLをコーディネート
ドクターには直接聞きづらい、話しにくいことでもスタッフなら話せるのが大方の患者心理です。コムネット会員の歯科医院でも、患者さんの悩みや要望を聞き、最適な治療を一緒に考え提案する「歯科コーディネーター」を配置している医院があります。患者さんは彼女に治療費やドクターの得意分野、性格などを聞き、安心して治療内容を選んでいます。また、それを院外から行っている例もあります。会員情報誌TOGETHER7月号で紹介した「アイボリーネット・サービス」では、歯科医院選びから治療方法の選択、さらに治療終了までサポートしています。
院内、院外、またその名称を問わず、患者さんを中心に置いて、予防、治療、メインテナンスという医療分野にとどまらず、「食」「美と健康」「アメニティ」全般からQOLを高めるために患者サイドから考え、動くサポーター、「コンシェルジュ」は、日本の歯科界、医療界でもこれからますます活躍の舞台が広がるでしょう。