歯科界へのメッセージ

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コムネット会員情報誌「Together」に掲載している、弊社社長・菊池恩恵によるコラム「TRIANGLE」です。

Medical Interview(医療面接)の導入

●患者さんに耳を傾ける医者

 メディカルインタビュー(Medical Interview:医療面接)という概念、方法論がいま、医科、歯科界(主に教育の分野)に急速に普及している。それは、従来の「問診」、即ち診断・治療のために症状や病歴を聴取するという目的にとどまらず、患者さんの訴えに耳を傾け、信頼関係を確立することを主眼とする面接を意味する。
 現在、欧米先進国においては「問診」自体が死語になっている、という。以前発行された『アメリカの医学教育』(1996年 赤津晴子著)の「最初の必修科目」が「問診学」である。改めて開いてみると、「問診」はまさに「Medical Interview」のことで、当時の日本ではまだ「医療面接」という言葉もなかったのである。この「医療面接」導入の目的は文部科学省の言葉を借りれば「患者本位の医療を実践できる人材づくり」にある。
 日本の医療全体が根本的に患者本位にシフトするには未だ相当の努力と時間を要するが、患者の立場に立ち、考え、診療にあたるという教育を受けたドクターが数年後臨床現場に登場することによって医療界の「常識」が大きく変わることは明らかである。

●ラポール・信頼関係の形成

 11月16日に行われた「第3回日本訪問歯科医学会」。東京歯科大学の石井拓男教授は、基調講演のなかでこの「メディカルインタビュー」を紹介した。歯科の「問診」は、ともすると「痛いですか?」「いつからですか?」というYes,Noで答える直接的で「閉鎖的な質問」から始まる。質問の目的が、歯科医師の都合を優先し、診療に必要な情報のみを収集することに主眼がおかれているからである。しかし、それでは痛みや苦痛、不安と緊張の中にある患者さんの心を解きほぐすことはできない。それらを解消するためには、患者-医療者間の良好なコミュニケーションが必要である。
 従って、メディカルインタビューの第1の柱に「ラポール(良好な関係性)の形成・信頼関係の樹立」があげられている。「面接」は自己紹介から始まり、自分の症状を詳しく述べられるような「開かれた質問」を行う。第2の柱は「病歴聴取・情報収集」、第3の柱は「患者教育・治療の動機付け」。いずれも、患者さんへの共感的態度、励ましと支援の姿勢を明確にした対応である。

●「デンタル・インタビュー」の創造を

 大学では、臨床実習前の4・5年生を対象に、模擬患者(SP)を使った訓練や、知識と問題解決能力をみる即答式試験(CBT)、客観的に臨床における技能や応接態度をみる実技試験(OSCE:オスキー)が始められている。報道によれば、ある大学では学生100人に5人の割合でOSCEの得点が低い学生がいるという。「病院に出せない」「不適性学生」には、再教育や転部等の措置が求められるが、今の学生にはすでに厳しい関門が待ち受けているのである。それは、人の生命にかかわり健康増進に寄与する医療者として、当然のことであり、「医療面接」の概念すらなかった日本の医療に対する厳しい反省でもある。
 現在、臨床の第一線に立っているドクターは、当然そのような教育を受けていない。しかし、独自に学び、相応の考え方や技術を身につけている歯科医師も多く、「コミュニケーション」関連書籍、セミナーも数多く存在している。その技能や態度は、一定の訓練によって習得が可能である。要は、それを日々の診療に位置付け、実行してゆくか否かの、ドクターの「パラダイムシフト」が決定的な転換の要因なのである。歯科に即した「デンタルインタビュー」創造をめざしたい。
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