歯科医院発<禁煙>の狼煙を
●「健康増進法」施行の意義
2003年5月1日「健康増進法」が施行されました。国民医療費30兆円時代を迎えたなかで、保健医療政策の基本を「疾病の治療」から、生活習慣を見直し「疾病を未然に予防する」方向へと舵を切る大転換といえます。
そのなかに、健康増進のための6つの重要ファクターとして、食生活、運動、休養、飲酒、喫煙とならんで「歯の健康保持」が位置付けられました。口腔の健康の重要性が認識されたことは(遅いとはいえ)歴史的なことです。
●「受動喫煙」防止措置盛り込む
「健康増進法」には、「受動喫煙」(自分は喫煙しないのに煙を吸わされている)の防止措置が盛り込まれました。施行当日のテレビは、構内が全面禁煙になった私鉄の駅を大きく映し出しました。条文では、病院やデパート、飲食店等「多数の者が利用する施設を管理する者は・・・受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずる」ことを定めています。
たばこは成人の嗜好品であり、喫煙自体は個人の判断に依りますが、望まないのに吸わされる人、ことに未成年者や嫌煙者にとって、一定の制約が定められたことは大きな前進です。
●「6人に1人が肺癌で死亡」!?
厚生労働省の調査によれば、日本人の喫煙率は、男性で49.2%、女性は10.3%〈平成11年〉、推定3千3百万人が年間3千億本の煙を吐き出しています。日本人の疾病構造は、昭和56年に癌が脳卒中を抜いて死亡原因の第一位となり、癌のなかでも、平成5年に肺癌が胃癌を抜いてトップになりました。喫煙者は、非喫煙者と比較して肺癌で4.45倍、口腔・咽頭癌で3.0倍、喉頭癌で32.5倍、食道癌で2.2倍という極めて高いリスクを負っています。ある研究者は、「20歳から毎日20本たばこを吸い続けると、6人に1人が肺癌で死亡する」と警告しています。
●歯周病の最大危険因子
歯周病は「細菌による感染症」です。その発症、進行には全身の健康状態や生活習慣、危険因子の存在等多くの要因が関与していますが、そのなかで、喫煙は歯周病の「最大の危険因子」と考えられます。
米・ミネソタ大学の研究では、難治性歯周病患者の90%以上が喫煙者で、免疫に関係する好中球など多形核白血球に異常がみられるケースが多かったといいます。熊谷崇先生の自院患者1616人の分析でも、喫煙者の歯周病進行の度合が非喫煙者と比べて大きいという結果が報告されています。
●歯科から〈NO!たばこの煙〉
喫煙・受動喫煙のもたらす健康破壊の危険性を語り広めるうえで、歯科医院・歯科医師の置かれている位置、果たすべき役割はきわめて大きいものがあります。アメリカでは、禁煙運動のリーダーシップは歯科医師がとっていると聞き及びます。
「健康増進法」に明文化された意図を100%生かし、さらに歯科の活性化の原動力にできるか否かは、今この瞬間、患者さんと向き合い診療を続けているひとり一人のドクターの奮闘にかかっています。歯科医院から、受動喫煙〈NO!たばこの煙〉を呼びかけていきましょう。