歯科新時代のリーダーシップ
「ビジョン」を示し、共有する
●経営に直結する「チームワーク」
前回の本欄で、「チーム医療体制構築」が急務であると訴えました。それに対して「どのように組織作りをすすめてゆけば良いのか」「院長のリーダーシップのとり方で悩む」という声が寄せられています。誰しも、自分の医院のスタッフが一致団結して診療に取り組み、患者さんに喜ばれ、医院経営も安定向上することを願っています。
ところが、平均で4.3人(厚労省・医療経済実態調査)という規模の歯科診療所で、しかも地域住民の口腔衛生、健康増進という明確な使命(ミッション)と業務内容をもつ歯科医院において、「スタッフ教育」に悩み「チームワーク作り」で苦労されている院長が非常に多いのが現場の実態です。
「市場原理」「競争の激化」という外圧に屈しない強い組織作りのためにも、また何よりも患者さんの健康と幸せな生活に寄与する歯科医院としての存在価値を高めるためにも、「チームワーク」は医院経営における最大のテーマのひとつです。
●21世紀型の「リーダーシップ」
リーダーシップとは、ともすると周囲をぐいぐいひっぱってゆく「統率力」や「俺についてこい」式の強い「指導力」と思われがちです。しかし、それは一昔前の、一元的ピラミッド型の組織が有効に機能していた時代のスタイルです。
現代、即ち情報化時代、価値観の多様な個性化時代においては、逆ピラミッド型のリーダーシップを発揮しなければチームワークは生まれないのです。「21世紀型組織」においては「全員がリーダーシップを発揮する」これがカナメなのです。
P.F.ドラッカーは、ソニーの出井伸之会長との雑誌対談のなかで「現代は、社員を部下ではなく協力者、パートナーとみることのできるリーダーが求められている。リーダーにとって最も需要なことはいかにフォロアーになれるかということだ」と語っています。予防歯科を推進する場合、歯科衛生士がまさに「予防のリーダー」であり、ドクターはフォロアー、パートナーなのです。
●医院の「ビジョン」を共有する
激変の時代、5年後、10年後の自分の姿、医院の状態を正しく予測することは、たいへん難しいことです。現在までの歯科医療、医院経営の延長線上に「未来がある」とは限りません。というより「ない」と断言できるでしょう。従って、新たなビジョンをドクターもスタッフも一緒に築き上げることが、いまほど個々の歯科医院にとって必要とされている時代はありません。
会員向け情報誌・Togetherのインタビューで紹介しているM歯科医院は、リニューアルというタイミングを逃さず、ハードもソフトも一気に刷新しました。「何よりスタッフが活きいきとして意欲的に向かってくれているのがうれしい」と院長夫妻。一人ひとりが「リーダーシップ」を発揮し自発的に動いています。
それは、徹底した話し合いの中から、医院を、そして自分自身を磨いて、患者さんに「私のイチバン」と言っていただける歯科医院にしようというビジョンを全員で築き上げ、共有することができたからです。
スタッフが誇りをもって仕事に邁進するためのビジョンを示す院長のリーダーシップ、その大切さを学ばされます。