Do It!Now
「患者の願い」に立脚する
●医院経営の「未来形」は
激動、激変の歯科界、これからの日本の歯科医療の行方を模索する動きが活発です。『ドイツに見る歯科医院経営の未来形』(秋元秀俊著:オーラルケア)は、予防歯科にTQM(Total Quality Management)を導入し実績をあげた診療所に「デンタル・エクセレンス」の認証を与えるドイツの動きを現地取材し注目されています。
歯科医院全体の1/3が銀行管理下におかれ、75,000人の歯科医師ライセンス保持者の2割が他の業種に流れ、1,200人が失業登録(1995年)という、深刻な困窮事態にあえぐドイツの歯科界。そのなかで「デンタル・エクセレンス」認証医院が、顧客満足度を高め「高品質」の歯科医療サービスで経営向上に成功している例を紹介しています。
従来の枠組みが破綻し、世界的な規模で進んでいる「健康変革」という名の構造改革。新しい医療体制への脱皮は急務です。秋元氏は、市場原理と競争の激化のドイツ現実を「明日の日本」とダブらせながら驚きをもって描いています。
●顧客(患者)意識の変化と動向
「歯科医療再生へのフライト」をテーマに、7月21日、日本歯科新聞社主催の「究極のマネジメントシンポジウム」が開催されました。総勢16名の臨床家、研究者、コンサルタントのシンポジストがそれぞれの立場から見識を披露。歯科医療の「再構築」について、厳しい現状と将来像に、短時間ながら熱気あふれる意見が交わされました。
本間幹也氏(福島県開業)は、「いま問われる意識改革と経営理念の転換」と題して、歯科医院をとりまく環境の変化、患者意識の大きな変化を正確に捉えることの重要性を強調。「日本の、マーケティングリサーチ不在の『学術論』『サービス論』では医院経営の将来は不透明だ。患者の来院動機・関心が『歯が痛い』『治療』から『口臭』『歯の汚れ』『黄ばみ』等に移っている。しかも『保険の範囲で歯と同じ色』を希望しているなかで、どのような経営方針をたてるのか」と現実に立脚した科学的な対応の必要性を訴えました。
●Do It!Now いまなすべきことは
何が大切かはすでに明瞭です。前提として、何よりも「患者中心」。患者さんの利益を最優先する診療姿勢を持ち得ない歯科医院は淘汰されるであろう運命にあるという示唆を、ドイツの例は示しています。
「患者利益」は一様ではありません。「予防歯科を追求する」「一生自分の歯で食べることができるような手助けをする」「侵襲の抑制=ミニマルインターベンション」等、方法論もアプローチも様々に考えられます。しかし、何より大切なことは、「患者さんが何を望んでいるか」を正確に知ることです。「歯科の未来」は、その延長線上にしかあり得ないからです。
Do it!Now。心をひらき、耳を傾け、語りかけましょう。ドイツが直面している現実とはまた違った未来がきっとあるはずです。