「混迷の時代」だからこそ
勇気をもって歯科の「構造改革」を
●「政治と金」で政治不信が拡大
政界は混迷をきわめています。証人喚問や議員辞職、知事や市長の逮捕と、与野党入り乱れて「政治と金」をめぐる疑惑に列島が揺れています。小泉さんは大きな声で「構造改革」を約束し「抵抗勢力になるなら自民党をぶっ潰す」とまで叫んだのに、次々に疑惑が発覚しても「政治家は身の振り方は自分で決めるものだ」と、自民党改革にはほとんど意欲をみせません。
世論はそれに敏感に反応し、一時は8割を超えた内閣支持率が40%まで急降下。「支持率は下がっても改革はやる!」という声も「遠吼え」にしか聞こえません。国民の期待が膨らんだ分、失望感や不信の念は増幅しています。日本の政治そのものが大きな危機に瀕しています。
●大歯集金代行・大歯連無届献金
歯科界における「政治と金」の問題として大きくクローズアップされているのが4月18日の新聞紙上で報道された大阪府歯科医師会、同歯科医師連盟による資金の流れ。「歯科医師会が自民党幹事長の後援会費を1200万円集金」「大歯連は選挙資金950万円を無届で政治家に配り、もらった側、塩川財相ら政治家も届け出なかった」というもの。発覚しても「事務処理上のミス」とケロリとしています。
「またか」国民は、次から次へと噴出する汚職や不正にウンザリしています。しかし、私たちの感覚を麻痺させてはなりません。「どうせよそでも同じ」という「悪慣れ」や諦めを排して事態を直視しなければなりません。
●日歯連盟鹿児島訴訟が示すもの
鹿児島地裁で争われてきた「日歯政治連盟訴訟」は、日歯連盟からの脱退の自由を規約に盛り込み、会費を返還するという内容で和解が成立。「『歯科医師会と日歯連盟は一体』であり連盟脱退=日歯除名」というこれまでの日歯側の路線を(原則的には)転換しました。原告側の実質的な勝訴、ほかに京都や福岡などでも争われている訴訟でも、同じ判断が示されるでしょう。
本来「公益法人」の歯科医師会と「政治団体」である日歯連盟はまったく性格を異にする組織であり、自らの思想信条に反して特定政党への政治献金を義務づけられるのは憲法違反、という原告の主張はごく常識的な訴えです。
同時に、これまで、どの業界よりも多い年間19億(2000年度)を政治献金し、国会議員を送り出してきた政治活動の枠組そのものへの根本的な問い直しが求められています。政党、政治家に資金を提供することで、どれだけのことがなし得たでしょうか。
●患者・国民の視点から歯科の「構造改革」を
私たちは、歯科医師会こそが、この機会に政治団体と明確に一線を画し、その存在意義にふさわしく、もっと国民の健康に資する活動を展開すべきだと考えます。それは「医道の高揚、歯学の進歩発展」「社会と会員の福祉向上」を旗印として掲げる「公益法人」として当然のことです。
通り一遍ではない、国民の口腔ケアに対する意識を向上させる活動、受診率を高める活動、また、現場のドクターが最新の知見や技術、方法論を学び研修するための支援等々、課題は山ほどあります。誰のためにお金を使うのか、何のために政治を動かすのか、この「閉塞感」の漂う混迷の時代だからこそ、根本から組み立てなおす気概をもって前進したいものです。
まず歯科界の「常識」と一般社会の意識とのギャップを認識することが必要です。視点を患者・国民の方に向けて、運動を構築しましょう。それが歯科の「構造改革」の第一歩です。やる気になれば、自分から、自分のまわりから変えてゆけるはずです。