「デフレ時代」をどう乗り切るか
「感動」と「満足」で「選ばれる医院」に
●歯科界にもデフレスパイラル!?
「日本経済は既にデフレスパイラルに突入している」という不安が強まっています。「デフレ」、物価が安くなるから、と喜ぶわけにはいきません。経済停滞→モノが売れない→物価下落→企業経営圧迫→失業(収入下落)→購買力低下→消費抑制→経済停滞、この流れがスパイラル(らせん)状に繰り返される「縮小連鎖」です。
歯科界もこのスパイラルのなかで、消費抑制が患者減少につながり、経営が極度に悪化している歯科医院が増えています。それは、65%の国民が「医療費が高い」と感じ、「不況なのでガマンし歯科の受診を控えている」人が3割もいるという数字にもクッキリとあらわれています。小泉内閣が強引に押し切ろうとしている社保本人3割化、診療報酬切り下げという更なる環境激変のなかで、「二極分化」が起こっているのです。
●「独自性」「強み」を持つものが生き残る
「二極化」時代は、差がつき、選別される激烈な競争時代です。歯科界は既に「供給過剰」状態にあり、消費抑制と患者による選別の〈ふるい〉のなかで、体力のない医院は退場(転廃業)を余儀なくされるという「歯科ビッグバン」のシナリオが準備されています。
しかし、「不況だ」「厳しい」といっても、歯科全体が落ち込むのではありません。上位2〜3割がますます繁栄し、あとの7〜8割は淘汰され、消滅してしまうかもしれないという時代なのです。現行の枠組のなかで、今までと同じこと(補綴中心の診療)を続けていては、確実に後者に属することになるでしょう。
周囲と異なる強み、例えば「予防」「小児矯正」「審美」「訪問診療」など得意な分野に特化し、独自性を発揮して、「他とは違う」医院経営を追求することが不可欠の課題です。
●「感動的満足」で活路を拓く
ビジネス界では、以前から「CS」(顧客満足度を高めること)が成功の条件と言われています。「医療もサービス業」という考え方も広まってきましたが、実態はなかなか変わりません。歯科医院における顧客即ち患者さんの満足を、どのように実現してゆくか、会員向け機関誌・Togetherの「すぐに役立つ歯科医院経営術」では、有効なアドバイスを行なっています。
「経営改善の決め手は何か」への回答(奥義)は「相手を喜ばせること」。その視点にたって個々の患者さんに密度の濃い対応をすることが決め手になります。そして、患者さんに心の底から「ありがとう」と言っていただく、「感動的満足」を感じていただくために、徹底して考え、行動するということです。まずはトップが意識を変えること、それがスタート台です。
●まず「何から始める」か?
Togetherで行ったアンケートで、「歯科医院でよかったと感じたことは?」という問いの中に「まず何から始めるか?」への回答があります。患者さんは「時間外なのに親身になって治療してくれた」「抜歯のあとで電話をかけてくれた」という親切に、また「逐一説明してくれた」こと、「丁寧に治療してもらえた」ことに心を動かされています。そのひと言一言から、患者さんの立場に立ちきって、自院の「満足度」を点検することが必要です。そこが「出発点」です。そして「経営術」でも提案しているように、大きな紙に思いつく限り書き出してみましょう。
第一に求められるのは、最新の設備でも、治療技術でもありません。まず「人」ありき。コストをかけずに「感動的な満足」を与える第一歩は「あいさつ」と「笑顔」です。院長が率先して、患者さんに安心と喜びを与えよう、その気持ちを患者さんに向けることから始めましょう。まず「始めること」、そして医院の決まりをつくり、「全員で取り組むこと」が肝心です。