小泉・医療改革の行方
7・24「規制改革基本方針」のめざすもの
●医療における「骨太の方針」の具体化
怒涛の「小泉人気」のなかで参議院選挙が終わりました。選挙戦最終盤の7月24日、我々が急いで分析・検討しなければならない政策が発表されました。政府の「総合規制改革会議」による規制改革「基本方針」です。今年3月の「規制改革推進3ヵ年計画」、6月に打ち出された小泉内閣の構造改革「骨太の方針」が「おそれず、ひるまず、とらわれず」と拍車をかけた、重点6分野の基本的な改革案です。この「基本方針」は、医療における「生活者・消費者本位の経済システム構築」と「経済の活性化」を同時に実現させるための「規制改革」の断行を提起しています。
基本方向は(1)利用者本位のサービスの効率化 (2)国民の安心と生活の安定を支える、安心、効率、透明、公平が確保された制度 (3)サービスの質を維持しつつコストを削減し、医療と経済を両立 (4)医療を利用者の選択に基づいたサービス産業の一つと位置づけ民間活力を拡充し経済活性化の原動力とする、というもの。「利用者本位」という現在の医療の中心的課題に対し、「民間事業者による自由な経済活動」即ち市場開放と競争原理の導入によって新たな道を開くことを明確にめざしています。日本の医療制度を根本から転換する最大の岐路といわなければなりません。
●情報公開・報酬体系見直し・競争原理を推進
発表された改革の具体的項目は以下のとおりです。
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1.医療に関する徹底的な情報公開とIT化の推進
- 1.原則電子的手法によるレセプトの提出【平成13年度中に実施】
- 2.カルテの電子化・EBM・医療の標準化などの推進【段階的】
- 3.複数の医療機関による患者情報(カルテ等)の共有、有効活用の促進【平成14年度以降逐次実施】
- 4.日本医療機能評価機構を含む第三者機関による医療評価の充実【平成13年度から段階的に実施】
- 5.医療機関の広告及び情報提供に係る規制の抜本的見直し【平成13年度中に実施】
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2.診療報酬体系の見直し
- 1.定額払い制度の拡大【段階的に実施】
- 2.公民ミックスによる医療サービスの提供など公的医療保険の対象範囲の見直し【平成14年から】
- 3.診療報酬、薬価、医療材料価格の決定方法などの見直し【平成14年度中に実施】
- 4.医療機関の経営情報の開示【平成14年度中に実施】
- 3.保険者機能の強化【平成13年度検討、結論】
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4.医療分野における競争の導入と効率化
- 1.医療機関の経営形態の多様化、理事長要件の見直し
- 2.医療資機材の内外価格差の是正【平成14年度中に検討し措置】
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5.その他
- 1.医療分野の労働者派遣について【平成14年度中に実施】
- 2.医療従事者の質の確保【平成14年度までに実施】
- 3.意志の教育改革【平成14年度までに検討】
- 4.医薬品販売における範囲の見直し【平成14年度中に実施】
●あくまでも患者さん=国民の視点から
「改革には痛みが伴う」と唱える小泉自民党に国民は「白紙委任」しました。その実際の改革の方向や「痛み」の強さは、ようやく具体的な形を見せ始めたばかりです。社保本人2割負担を断行した当時の厚生大臣が小泉さんであり、97年の医療改革方針を推進する、という言動からみると、本人3割(病院5割)負担というシナリオも当然予想されます。いま必要なことは、医療界全体が、21世紀のあるべき医療の姿を、あくまでも医療サービスの主人公である患者さん=国民の視点から検討し、議論し、ビジョンを示すことです。