「健康日本21」への期待
健康を見据えた総合戦略
●「健康」に照準を合わせて
西暦2000年を迎え、「健康日本21」(厚生省主管)がスタートします。日本の医療は、制度の抜本的な改革が遅々として進まず、年間30兆円におよぶ医療費を費やしながら、国民の疾病は減らないという大きな矛盾のなかで破綻寸前の事態に直面しています。
そのなかで厚生省は、医療のありかたを「病気を治す」ことから「健康を維持し増進させる」という予防・健康医学に方向転換し、はじめて疾病を減らす目標数値を設定しました。「健康」に照準を合わせた総合戦略として注目されています。
●10年間で8020を20%以上にする
「健康日本21」は、食生活・運動・休養・たばこ・アルコール・歯科・糖尿病・循環器・ガンの分野から「生活習慣の改善」「危険因子の低減」「疾病の減少」をテーマに、それぞれの「10年後」の数値目標を定めています。歯科をみると、きわめて積極的な内容です。
- 3歳児におけるう歯のない者の割合を(現在)59.4% →(10年後)80% 以上にする
- 12歳児における1人平均う歯数(DMF歯数)を 3.6本→1本以下にする
- 40,50歳における進行した歯周炎に罹患している者(4mm以上の歯周ポケット)の割合を3割以上減少させる
- 80歳で20本の歯を有する者(8020)の割合を4.6%→20%以上にする
目標値は「世界のレベルに追いつけ」。これをどのように具体的に推進するか、それがこれからの大きな課題です。
●フッ素の積極的な活用が課題
歯科疾患を劇的に減少させるには、すでに世界中で積極的に活用されているフッ素による歯質強化がきわめて有効です。アメリカをはじめ、アジアでも既に韓国や中国などがフッ素水道を実施しています。
しかし「健康日本21」のフッ素についての記述はフッ素塗布、洗口程度にとどまり、かつて1969年に日本も賛成したWHOの「フッ素水道水推進」には程遠い内容です。しかし日本でも先月、日本歯科医学会がようやく「フッ素の有効性・安全性」を認めたことから、今後どのようにカベを破り、積極的に推進してゆくか注目したいと思います。
●国民の自覚をどう高めるか
健康の維持、増進のためには国民自身の口腔衛生に対する自覚を高めることが何よりも重要です。健康に生きる主体が国民自身だからです。残念ながら、日本人の多くは未だ「歯医者には痛くならなければ行かない」という意識水準です。
「健康日本21」の成否は、この国民(患者さん)の口腔衛生に対する意識をどう高めるかにかかっています。そして「健康・美しさ・良い噛み合わせ」のために自覚的に来院する患者さんを育て、医院のまわりにいかに多く獲得できるかが、21世紀の医院経営を根本から左右することも事実です。
「健康日本21」、ドクター自身が自ら患者さんとともに「健康の風」をおこす気概をもって、2000年にダッシュしてください。